自粛生活で見えてきた「おうち時間を大切にする生活」のこと
新型コロナウィルスの影響を受けての自粛生活。お仕事がテレワークになったり、休日もできるだけ外出しないようにしたり……と、家に閉じこもる生活が続いた方が多かったと思います。
私もそのひとり。私は舞台女優なので、4月に舞台に出演予定だったのですが、公演が延期になってしまいました。当然、稽古も全て中止に。私にとってライフワークでもあり、当たり前の日常でもあった「舞台に立つ」ことが急にできなくなってしまいました。
不安でいっぱいの中、自粛生活をスタートしたのですが……振り返ると自粛生活の中で得るものもあったのです。
【最初は不安な日々だった】
約2ヶ月の間は必要最低限の買い物をのぞいて、ほとんど外出しない毎日。ずーっと家に閉じこもるなんて、これまでの人生で経験したことがありません。
さらに、舞台再開の先が見えないことに対する大きなストレスもあり、最初の数日間は心が病みそうなぐらい落ち込んでいましたが……。だんだんいつまで続くか分からないこの状況を「何とかしなくちゃ!」と思うようになりました。
舞台をやっていると、お稽古に本番にと忙しくてなかなか自分の時間がとれません。「だったらこの機会に思いっきり自分だけの時間、趣味の時間を楽しもう」と思いついたところから、少しずつ気持ちが回復していきました。
【趣味の時間を大切にできた】
私がひとりっこで転勤族だったせいもあるかもしれませんが、子供のころからお人形遊びや、絵を書くことなど「ひとりで何かを創作する」遊びが大好きでした。
大人になると忙しくなってしまい、なかなか趣味の時間はとれません。でも今回の自粛生活で、久しぶりにもくもくと遊ぶ時間を楽しめたのです。
コツコツとミニチュアドールハウスを組み立ててみたり、オリジナル柄の食器を作ってみたり。
誰にも邪魔されず、自分のペースで遊べる。子供の頃に戻ったようで、静かながらも充実した時間でした。
【自炊で食生活を見直せた】
もうひとつ良かったことは、自炊でお家ごはんが充実したこと。
中でも旬の食材をお取り寄せしたのは本当にいい経験になりました。春の筍がこんなに美味しいなんて知らなかったんです! あまりの衝撃にこれからも旬の素材を楽しみたくなって、料理本の「旬の食材」のページをチェックするようになりました。
自炊にも飽きてきたな……と思う日には、外食できない代わりに一風変わった食材で気分を変えてみたり。
特に生ハムの原木はゴージャス気分を味わえて日持ちもして、最高の相棒と言っても過言ではありません。
不思議なことに、食事がおいしいとそれだけで何だか気持ちが楽しくなるんですよね。「人間にとって、食事って大切なんだなぁ」と改めて見直すきっかけにもなりました。
【ひと目を気にせず美容を楽しめた】
そして自粛生活中、嬉しいことにお肌がキレイになりました。
いつもよりじっくりスキンケアする時間もあるし、メイクをしない日も多い。睡眠時間もたっぷり確保できて、いつもの疲れをリセットできたのかなと思います。
でも、あまりにすっぴん時間が長すぎたせいか数日おきにメイク欲が出てくることもありました。そんな日は、誰が見ているわけでもないのを逆手にとって普段だったらまずできないカラフルメイクに挑戦したり。
すっぴんでお肌を休めることも、その反対にメイクすることも、「人に見られるから」「礼儀だから」という理由ではなく「自分がそうしたいから」という気持ちでゆっくり楽しめたのは良かったなと感じます。
【自分軸で過ごす毎日】
多くの人がそうだと思うのですが、学校やお仕事があると、知らず知らずのうちにどうしても「自分以外の誰かを基準に」生活することが求められるんですよね。
この自粛生活ではお家で過ごす中で「自分の」ペースで毎日を過ごすことができて、忙しい今の時代にかなり貴重な時間だったんじゃないかな? と思っています。
最後に忘れてはいけないのは、私が自粛生活を送れたのもその間に働いて下さった方がいらっしゃるからこそ。
特に配送業の方たちには食材や本をたくさん配達して頂いて、自粛生活中にはお世話になりました。本当にありがとうございます。
【まだ不安はあるけれど】
とはいえ、不安が消えたわけではありません。延期になった舞台はいつ公演できるのか……正直に言うと、心配は尽きません。
これからまた以前のような日々に戻れるのか、もう二度と戻れなくて、全く違う世界になってしまうのかは分かりませんが、この自粛生活を通してきちんと「自分」と向き合えたことで、不安と上手く付き合えるようになったこともひとつの収穫だったのかもしれません。
また不安になったときはた落ち着いて「自分」と向き合えば大丈夫。そう思いながら、一歩ずつ進んでいきたいと思います。
執筆・撮影:五條なつき
Photo:(c)Pouch