【プライド月間】Netflixで話題の『ハーフ・オブ・イット』は青春映画の傑作! 同性愛者の文学少女がラブレターの代筆を頼まれて…
【映画ライターの斎藤香がオススメするNetflixのイチオシ映画】
皆さん、6月はプライド月間です! LGBTコミュニティー、文化への理解を深めるための活動月間で、欧米ではさまざまなイベントが毎年企画されています。
今回はLGBT関連の最新映画としてNetflixで話題の『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』をピックアップしたいとおもいます! これがめちゃくちゃ素晴らしい青春映画だったんです。
【物語】
アメリカの田舎町で暮らす中国系のエリー(リーア・ルイス)は、学校でただ一人のアジア系女子。閉鎖的な田舎町ゆえにアジア系というだけで周囲から距離を置かれ、友達はいません。
そんな彼女に声をかけてきたのはアメフト部のポール(ダニエル・ディーマ)。学校でいちばんの美女アスター(アレクシス・レミール)に告白するために、エリーにラブレターの代筆を頼んできたのです。
エリーが学業優秀で、同級生たちの宿題代行をバイトとしてやっているのを知り、代筆を依頼してきたのですが、彼女はめちゃくちゃ悩みます。なぜなら彼女もアスターに恋をしていたからです。
【ラブレターの代筆から始まるエリーの青春】
結論からいいますと、とってもいい映画でした! 孤独でつまらない日常を送っていた女子高生のエリー。でもポールがラブレターの代筆を頼んできたことで、人生が思いがけない方向へと転がっていきます。
エリーはアスターに恋しているので、最初は「ポールとアスターの恋に協力するなんて!」と思っていましたが、貧しい家庭のエリーにとってバイト代は生活費。だからしぶしぶ始めるのですが、なんと文通によってアスターが自分と同じく読書家だということ、周囲とはうわべの付き合いで、話があう友達がいなかったことがわかります。
さまざまな作家の名言を散りばめた知的な手紙を受け取ったアスターはとてもうれしかったんですね。二人は手紙を通して意気投合し、文通にノリノリになっていくのですが、アスターはポールからの手紙だと思い込んでいるというのがエリーとしては心中複雑、ちょっと切ないです……。
【エリーとポールの友情が爽やか】
一方、ポールは、長々と続く手紙のやり取りにイラついて「早くデートしたい。ハンバーガー屋でポテト食べたりさ~」とか言うので、おバカ男子なのかと思いましたが、アスターと一度デートをしたとき、読書家の彼女と会話が弾まなくてショックだったのか「俺も本を読む!」と、読書を始めるんですよ。
「誰かのために努力するのが愛だろ」とか本に影響されてかっこいいこと言っちゃうポール。ポールのそんな飾らない性格と前向きな姿勢に知らず知らずのうちにエリーは影響されていき、二人は親友のようになっていくのです。この友情が育まれていくプロセスがとても心地よく、また古風な手紙とスマホを利用した二人の恋愛成就大作戦、これもけっこう楽しいです。
【LGBTは特別じゃない】
エリー、ポール、アスターの3人の関係がどうなってゆくのかは、ぜひ映画を観ていただきたいのですが、手紙の代筆がきっかけで、エリーの何も起こらなかった人生が確実に動いていく様は共感度も高く、とても見応えありました。
人生って何がきっかけで大化けするかわからないし、やってみなくちゃわからないことはたくさんある。エリーは人生を諦めて心の扉を閉じていましたが、ポールとアスターのおかげで扉が開き、未来への第一歩を踏み出すことができるのです。
また本作のヒロインはレズビアンですが、それをことさら強調しているわけではありません。エリーがアスターに恋していることを普通の恋愛として描いていますから。彼女はマイノリティかもしれないけど、特別じゃない。アリス・ウー監督ら、製作陣が彼らを特別視していないからこそ、サラリを描くことができたのかも。本当にセンスのいい青春映画です。ぜひぜひ観ていただきたいと思います!
執筆=斎藤 香(c)Pouch
『ハーフ・オブ・イット:面白いのはこれから』
監督:アリス・ウー
出演:リーア・ルイス、ダニエル・ミーマー、アレクシス・レミール、エンリケ・ムルシアーノ、コリン・チョウほか
Netflix映画『ハーフ・オブ・イット: 面白いのはこれから』独占配信中