【本音レビュー】『響-HIBIKI-』は欅坂46の平手友梨奈だからこそ成立した映画。演出のアラを彼女の存在感だけで完璧にカバーしています
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします
今回ピックアップするのは、現在絶賛公開中の映画『響-HIBIKI-』(2018年9月14日より公開中)です。ちょっと出遅れましたが、映画初主演の平手友梨奈さん(欅坂46)が評判よいので「これは見なければ!」と、映画館で鑑賞してきました。原作は「マンガ大賞2017」を受賞した柳本光晴・著「響~小説家になる方法~」の実写映画化です。この映画の魅力はとにかく平手さんです! では物語からいってみましょう。
【物語】
出版社の文芸編集部に封書で届いた新人賞の応募作品「お伽の庭」。「WEB応募のみだから失格」と、ゴミ箱行きになったその応募作に興味を示した編集者の花井ふみ(北川景子)は、最後まで読み切り、天才小説家の誕生を確信しました。
差出人の鮎喰響(平手友梨奈)は、文芸部に所属する高1の女子。常に自身の正義を貫く彼女は、売られた喧嘩は必ず買い、許せない相手を蹴り飛ばすような少女でした。ある日、花井は探し続けていた響にやっと出会い、この天才少女を世に出そうと尽力。響は芥川賞・直木賞のW候補になります。しかし、暴力行為が問題視されてしまうのです。
【響は平手さん以外の女優では演じられない!】
この映画は、まるで平手さんのためにあて書きされた物語なのではないかと思うくらいピッタリでした。正直、セリフは棒読みに聞こえたりもするのですが、響は感情の浮き沈みがあまりないので、抑揚のないセリフまわしが逆にすごく響を表していていい。これを計算でやっていたらスゴイことです。
響は基本、無愛想なんですが、好きな作家に会ったときに「握手して」とお願いしたり、動物を抱っこして笑顔を見せたり、感情がない女の子ではないのです。普段は鉄仮面のように表情がないので、何気ないシーンなのに少し微笑むだけで「やっぱり15歳の女の子なんだ」とホっとさせるという、このあたりは巧い演出だなあと思いました。
響が文壇で話題をさらっていくのと同時に暴力行為がスキャンダルとして発信されていくのですが、響はいつもと変わらない。自身に起こった明と暗に普通の十代ならばおびえますが、彼女には確固たる自分があるから、社会の常識とか関係ない。そんな響と平手さんは完全にシンクロしており、こんなにドンピシャな女優と出会えて、響は幸せなキャラだと思いましたね。
【暴力の理由と、小説の内容が気になった…】
とはいえ、内容については「?」と思うところもありました。まず、響は腹が立ったとき、相手に対して突然暴力をふるうのですが、彼女が暴力に走る理由、その背景が描かれていないので、「頭、大丈夫か?」と思ってしまうわけです。
映画としては、アクションが入ったほうが面白いのかもしれないけど、パイプ椅子で突然背後から人を殴り倒したりして「まだ子供だからすぐ手が出ちゃうんです」とかいう問題ではなく、もうヤバイ子レベルでしたから!
また、天才小説家として、編集者やライバル小説家たちをうならせる傑作「お伽の庭」ですが、小説の内容がまったくわからない。周囲が「スゴイ、スゴイ」「天才だ」と騒いでいるだけで、何がどうスゴイのかが全然見えないんです。その小説の断片だけでも見せることで、説得力が生まれるのに……。これは映画として工夫すべきだったのではないかと。響の天才感が映画を見ているほうにはまったく伝わらないのは残念! としか言いようがないです。
【平手さんの存在がこの映画の弱点を救う?】
そういったマイナス要素はあるのですが、それらをすべて平手さんが飲み込んで、ヒロインとして堂々と君臨!「文句など言わせない!」と、観客をもビビらせる勢いを感じました。
かわいいアイドルはたくさんいるけど、平手さんが一線を画すのは、かわいいを投げ出している感ですかね~。そんな平手さんの魅力がつまった映画『響-HIBIKI-』。アナーキーなアイドル映画として見応えはあると思います!
執筆=斎藤 香 (c)Pouch
『響-HIBIKI-』
(2018年9月14日よりロードショー)
監督:月川翔
出演:平手友梨奈 アヤカ・ウィルソン 柳楽優弥・小栗旬/北川景子
(C)2018映画「響 -HIBIKI-」製作委員会 (C)柳本光晴/小学館