映画『ゴースト・イン・ザ・シェル』はスカヨハの魅力が大爆発! アニメ版の押井守監督も「存在感とカリスマ性が強烈なんだ」と大絶賛【最新シネマ批評】
【公開直前☆最新シネマ批評]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、話題作『ゴースト・イン・ザ・シェル』(2017年4月7日公開)です。原作は、士郎正宗の漫画『攻殻機動隊』で、これをアニメ化したのが押井守監督作『GHOST IN THE SHELL 攻殻機動隊』。押井監督のアニメは多くのアニメーターや映画業界人に衝撃を与えた作品ゆえに、ハリウッド実写版がどのようになるのかは、ファンは期待に胸を躍らせたり「大丈夫か?」と不安になったりしたでしょう。
「原作やアニメ知らないと、わかんないんじゃないの?」という皆さん、この映画はマニア向けではなく良い意味で一般向け、ザ・エンタティメントな作りになっています。というか女性に見てほしいSFアクション映画なのです。
【物語】
悲惨な事故から奇跡的に生還した少佐(スカーレット・ヨハンソン)ですが、脳以外は全身義体となっています。彼女は公安9課の仲間を率いて、人の脳をハッキングして自在に操作するサイバーテロリストを追いかけています。
壮絶なバトルに耐える肉体を持った少佐ですが、ときどき自分の記憶に不安がよぎります。本当の自分なのか、体だけでなく脳も操作されているのでは? と。 やがて彼女は真実を知ることに……。
【奇妙な感覚をも楽しむハリウッド版】
おそらく原作やアニメに思い入れがある人は「そもそもなぜヒロインがスカーレット・ヨハンソン?」と思うのでしょう。少佐の本名は日本名ですからね。
しかし、舞台は近未来で、脳以外は義体なので、表向きは男女の性さえもあまり問題ではないんじゃないかなあと。女性の義体を与えられただけで、脳はもともと男性というサイボーグも存在するかもしれないし、それもありだと思える混沌とした世界なんですよ。人種の違い、肌の色の違いってなんだ? と。
もちろん脳のルーツをたどれば、どこの国で生まれ育ったのかに言及していくことになりますし、家族の存在も関係していきますが、日本人のようだけど、スカーレットが演じているということが、この映画の奇妙な味わいにもなっています。少佐の脳も、彼女自身が信じる記憶は真実なのかと、少佐が悩み始めて物語は加速していくのです。
【ビギナーにはたまらん魅力がつまってる!】
原作やアニメは、人間の存在というものを深堀した哲学的な側面もあるようですが、ハリウッド版は、多くの人に見てもらうエンタティメントの側面を重要視しています。ヴィジュアルはエキゾチックな近未来感満載だし、アクションも激しく浮遊感がハンパありません。本作は3D上映もあります。自分は2Dで見たのですが、おそらく少佐がビルの屋上からフワっと飛ぶシーンなど、3Dで見ると圧巻でしょう。
誰でも大いに楽しめるエンタティメントに仕上げたのがハリウッド版『ゴースト・イン・ザ・シェル』。全米では「本来の魅力が薄められた」と辛口映画評もあるようですが、逆に自分はわかりやすくてホッとしました。そして映画を見て、強く惹かれ「アニメ版も見なくては」と。本作は『ゴースト・イン・ザ・シェル』ビギナーには、良いきっかけになる映画なんですよ。
【演技+壮絶アクション、無敵の女優スカヨハ】
アニメ版の押井守監督はスカーレット・ヨハンソン主演を聞いて、とても喜び「肉体の存在感が圧倒的で、固い表情で歩いているだけで、ちゃんとドラマが伝わってくる。存在感とカリスマ性が強烈なんだ」と語っています。さすが見抜いてらっしゃる。
彼女の凄さは静の演技、動の演技、それぞれ完璧にこなせる実力者であることが大きいです。例えば『真珠の耳飾りの少女』ではフェルメールの絵のモデルになった少女を演じ、『アベンジャーズ』では、ブラック・ウィドウで本作に負けないアクションを披露しています。つまり、複雑な内面を持ちつつ、常に闘うことを余儀なくされている少佐を演じるのにスカーレットは適役だったのです。また彼女はモデルのようなスリムな体型ではなく、肉感的なところも魅力。だから義体だけど人間味を感じさせ、感情移入しやすいのかもしれません。
ネタバレになるので、詳細は避けますが、ちょっとラブなエピソードもあるので、本当に女性にオススメです。スカーレットはかっこいいし、女性同士で見て盛り上がれるのではないでしょうか。
執筆=斎藤 香(c)Pouch
『ゴースト・イン・ザ・シェル』
(2017年4月7日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:ルパート・サンダーズ
出演:スカーレット・ヨハンソン、ビートたけし、マイケル・カルメン・ピット、ピルー・アスベック、チン・ハン、ジュリエット・ビノシュほか
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