【連載】第2回 はじまりはサウナから【くもりのち雨 時々サウナ】
暦の上ではもうすっかり秋だというのに、夏のような寝苦しさで目が覚めてしまった。東向きの寝室の窓には朝日がよく入る。
冷え込んだ夜のうちに出した羽毛布団は無意識に蹴飛ばされて、ベッドの下でむなしく丸まっていた。
今日は待ちに待った休日。もう少し寝ていようか、このまま起きてしまおうか。
1週間の疲れを引きずって重たい身体はスムーズに動きだせるはずもなく、そのまま布団の上で小一時間が経過してしまった。寝転がったまま、ずぼらに腕をのばして窓をあけると、外の空気は思いのほか涼しくて、ふと「ある考え」が降りてきた。
一気に回りだした頭で、あわてて時計を確認する。8時。よし、まだ間に合う。とりあえず眉毛だけ描いて、適当な服を引っ掴んでおよそ10分で支度は完了。
いざ、朝サウナへ。
徒歩30分、普段なら歩く気になれない距離も、朝方なら不思議と苦にならない。住宅街をずんずん進むと、銭湯にしては大きく立派な看板が秋晴れの広い空に突如姿をあらわした。
朝湯の浴室は、大きなガラス窓から自然光がたっぷりと差し込んで清々しい。熱いシャワーを頭から思い切り浴びて、いそいそと露天にあるサウナ室に向かう。
優しくほどよい湿度のコンフォートサウナで、朝のごわついた肌がじんわりと蒸されて柔らかくなっていく。
気温が下がったせいか、水風呂の温度もいつもより心なしか冷たく感じる。サウナで火照った身体がギュン!と冷やされる感覚がたまらなく気持ちいい。
起き抜けに感じた夏はもう気配すらない。水風呂からあがって全身で感じる風は、すっかり冷たくて秋の匂いに満ちている。
そのまま露天にある寝椅子にごろりと横になると、ちょうど頭上にちらちらと紅葉の葉が揺れていた。葉の色はほんのりと色づきはじめ、その先に見える空は澄んでいてすこしだけ高く感じる。
さて、今日は何をしようか。
新しい季節も、休日の朝も、サウナからはじまればなんだって特別だ。