ストライクゾーンは広いのに、出会う男はだめんずばかり…ダメ男に悩む乙女限定の「スナックマリアンヌ」
ここは、恵比寿の外れに佇む雑居ビルの2階、スナックマリアンヌ。ダメそうでダメじゃないちょっとだけダメな男に悩む乙女が夜な夜な集う、憩いの場です。今宵もマリアンヌママに話を聞いてもらおうと、お客さまがやってきたようです。
――カランカラン。
乙女「ママ、婚活のマッチングアプリってやったことあります?」
ママ「一度だけ、あるわよ。何事も勉強だからね」
乙女「それで、どうでした?」
ママ「一発目からどえらいゴミ男引いちゃって、そっと削除したわ」
乙女「そうなんだー、その話ものすごく掘りたいな。てか、私もぜんぜんダメで。半年くらい前から始めて、何人かと会って、付き合うまではいくんですけど、なぜか全員ダメ男」
ママ「はい、ここは私の出番ね、聞かせてちょうだい」
【今日のダメ男さん:私を踏み台にしていった歴代のだめんず彼氏たち】
相談者:ユイ(32歳)
職業:WEBライター
ダメ男さん:歴代の元彼たち(16歳〜36歳)
職業:学生・書店員・飲食店店長・ITエンジニア・デザイナー・起業家・大学講師・アパレル販売員・不動産営業マンなど
交際期間:ほとんど半年未満
出会いのきっかけ:いろいろ
ユイ「私、彼氏には不自由しないタイプなんです。偉そうにって、思うかもしれないですけど」
ママ「あら、ここはダメ男に悩む乙女限定のスナックよ。男は来ないんだから、本音で何でも言いなさいね。というかあなた、一般的な「美人」というのと違うけどかわいらしいし、センスもいいし、上品さと色気のバランスもいいわ。昔からクラスで2、3番目くらいにはモテたんじゃないかしら? はい、ビールどうぞ」
ユイ「(グビグビッ)はあ……ありがとうございます。正直、彼氏を作るのは簡単だと思う、でも、結婚となると別でしょ? それで婚活アプリを始めたんですけど、会う人会う人みんなダメ男で。どうして私に寄ってくる人って、ダメんずばっかりなんだろう……」
ママ「あら、一体今までどんな人と付き合ってきたのかしら?」
ユイ「暴力を振るう人とか、ヒモ男とか、そういう人はいません。でも、だいたいみんなプチ・だめんずなんです。例えば、食事は基本割り勘、それはいいんですけど、100円多く払っただけでやたら恩着せがましくなる男!」
ママ「いるわよね、そういうの。『多く払ってもらっちゃっていいの? ありがとう~(はあと)』的なこと言ってあげるためのサービス料にもならないよね、100円じゃ」
ユイ「あと、居酒屋で店員さんに対する文句ばかり言う人。普段は優しいのに、突然どうでもいいことで怒って。そのくせ注文するのに店員さんを呼ぶのは私だし、私にクレームまで言わせて。しかも、彼の代わりにしょうがなくクレーム言ってるのに、自分は関係ないみたいな顔をする、そんな男!」
ママ「そいつはプチでもなんでもなく正真正銘のクソだめんずよ。居酒屋の席がちゃぶ台だったら私、3回ひっくり返したあと持ち上げて横方向に殴りつけてるわよ」
ユイ「それ、人が死ぬよねママ! あとは、よくある話ですけど……彼氏が入院してるっていうからお見舞いに行ったんです。そうしたら、独り身のはずなのにやけにベッド周りにいろいろ揃ってて、なんか怪しいと思ったら私の他に彼女が3人いた男」
ママ「よくある話じゃないわね。ぜんっぜんないわね」
ユイ「しかも、奥さんもいて子どもが6人いたんですよ。びっくりですよね」
ママ「って、大家族かよ!! あなた、かなりいいネタ持ってるわね」
ユイ「私……そろそろ結婚したい!」
ママ「なるほどねえ。さっ、これでも食べて落ち着いてちょうだい。今日のシメは【おにぎり】よ」
ユイ「えっ、もう帰れってことですか? 確かにけっこう飲んだけど……。っておにぎりの中身、サケかあ。私あんまり好きじゃないんですよね、サケは」
ママ「……黙って食べなさい♡ まあでもね、お酒の締めと、男が結婚相手に最終的に選ぶのは、おにぎりだって決まってるでしょ」
ユイ「お酒の締めはわかるけど、どうして男の人が結婚相手に選ぶ人がおにぎりなんですか? おにぎりに似た女子なんですか? 意味わかんないんですけど……」
ママ「例外はもちろんあるわよ。でも、典型的な『男が好きな女性』っておにぎりのような優しさで包んで、男を立てる控えめなひと。そんな女いねーよアホかDTの国に帰れ、って言いたいところだけど、結婚したいなら『そういうフリ』をするのもアリかもね。逆にあなた、彼氏選びの条件って、何か決めてる?」
ユイ「特に決めてはないかな。暴力振るったりしなければ、何でもいい! 年上だって、年下だって、バツイチだって、収入がそんなに高くなくたって、オッケー。それなのに、どうして結婚できないんだろう?」
ママ「何でもいいっていうけど、割り勘勝ち誇り男はダメ。クレームこすりつけ男も、子供6彼女3の多すぎ男も全部ダメでしょう、あなた」
ユイ「それ、しかたなくないですか?」
ママ「そうね、だから誰でもいいなんてウソっぱちなのよ。まずそこに気づいて。せっかく婚活アプリを始めたなら、手当たり次第誰でも会うんじゃなくて、きちんと条件を決めてごらんなさい。趣味が合う人とか、何歳以上とか。結婚したいのなら、それが正しい婚活アプリの使い方。そうしないと、ダメ男ホイホイになるわよ」
ユイ「でも、ストライクゾーンはなるべく広い方がいいと思いません?」
ママ「ストライクゾーンが広いっていうのは、変なのもいっぱい飛んでくるってことよ。それにあなた結局、デブはダメだとか、ハゲはダメだとか後からぐちぐち文句言って」
ユイ「デブハゲはダメって、言いましたっけ……?」
ママ「そうやってどんな人でもいいですぅ~って言っておきながら、後出しで条件を厳しくするなんて、中身の具がさっぱりわからないおにぎりみたいなもんよ。ちゃんとしたおにぎりはね、中に何が入っているか、ちゃんと示しておくものなの。あなたの場合、なんでもいいにだまされたダメ男が寄ってくるうえに、経験を積んだいい男は『誰でもいいはウソ』って見抜くから、去っていくはずよ」
ユイ「……」
ママ「さっ、お土産用のおにぎりあるから、これ持って今日はお帰りなさい。ウメとおかかよ」
ユイ「……はい」
――カランカラン。
常連客「今日のママ、ちょっと厳しすぎない?」
ママ「厳しかったかしら? でもあの子には、私のようになってほしくないの」
常連客「ママ……おにぎりのような優しさ持ってるのに、どうして結婚できないんだろうね」
ママ「具がハバネロだからよ」
こうして、今日もダメ男に悩む乙女をまたひとり、恋愛という戦場に送り込んだマリアンヌママ。次のお客さまは、あなたかも!? スナックマリアンヌでは、迷える乙女の悩みを聞く憩いの場として、いつでもご来店をお待ちしています。
撮影協力:コワーキングスナックCONTENTZ分室
執筆=マリアンヌ / 撮影=K.ナガハシ (c)Pouch
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