コメディアン「志村けん」は俳優としても一流だった! 映画『鉄道員(ぽっぽや)』の切ない芝居とは?
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が、アマゾンプライムで見られる映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、急逝した日本一のコメディアン志村けんさんが唯一出演した映画『鉄道員(ぽっぽや』(1999年)です。この作品は、主演の名優・高倉健さんが志村さんへ直々に依頼をして出演が実現したと言われています。私は公開時に観ていましたが、志村さんの演技をもう一度観たくて再見!
この映画で志村さんは笑わせてくれるのでしょうか? い~え、泣かせてくれるんですよ~。
【物語】
北海道のローカル鉄道・幌舞(ほろまい)線は、幌舞駅の駅長である佐藤乙松(高倉健)の定年退職の年に廃線となった。鉄道員の仕事に誇りを持ち、駅を守ってきた乙松。彼は17年前にまだ赤ん坊の娘・雪子を亡くし、続けて妻の静江(大竹しのぶ)も亡くした孤独な男です。ある日、彼のもとに可愛いお客さんが来ました。都会からやってきた少女は人なつっこく乙松に声をかけます。その数日後には中学生、そのあとは高校生の女の子が乙松のもとへやって来るのです……。
【俳優・志村けん、回想シーンに登場してインパクトを残す】
志村さんが登場するのは乙松の定年退職の日が近づき、彼の鉄道員としての人生が回想で綴られて場面。
志村さんが演じる吉岡は、息子とともに、炭鉱の町・幌舞で仕事を得ようと息子とやってくる炭鉱夫。大酒飲みで酒癖が悪く、すぐ暴れて乙松の世話になるような男です。妻には逃げられ、仕事もままならず、酒に逃げている吉岡を、志村さんは渾身の芝居で見せていて驚きますよ。笑いゼロですから!
息子にも迷惑かけっぱなしのしょーない親父。でも酒を飲みながら、そんなふがいない自分を責めているようで、観ていて切なかったです……。コントで演技を磨いてきた志村さんならではの芝居で、笑いを封印しても十分魅力的! 俳優としての志村けんをもっと観たかったなあというのが本音です。
【山田洋次監督もゾッコンだったのに~】
『鉄道員(ぽっぽや)』は、憧れの高倉健さんのオファーだったからこそ引き受けたわけですが、2020年は名匠・山田洋次監督の最新作『キネマの神様』(2020年12月公開予定)で久々に映画出演をする予定でした。それも菅田将暉とW主演で!
「僕が映画に出演させていただくのは人生で2度目で、前回から20年ぶりになります。松竹映画100周年という節目の作品に選んでもらい、光栄なことだと思っております。ありがとうございます。山田洋次監督の作品もたくさん見ていましたので、緊張感と不安を感じつつも、撮影に入るのをとても楽しみにしています」
と、志村さんは公式にコメントを残しています。映画出演をとても喜ばれていたんですよ。志村けんの俳優としての新時代の幕開けになったかもしれないのに、本当に本当に残念だ~!
志村さんの笑い抜きの名演技が観られる映画は『鉄道員(ぽっぽや)』だけ。Amazonプライムビデオでも配信中ですので、笑いの神様の役者の顔をぜひ観てください!
参照元:Amazonプライムビデオ、「キネマの神様」公式サイト
イラスト:マミヤ狂四郎
執筆:斎藤香 (c)Pouch
『鉄道員(ぽっぽや)』
監督:降旗康男
出演:高倉健、大竹しのぶ、小林稔侍、広末涼子、奈良岡朋子、田中好子、安藤政信、志村けん、吉岡秀隆