【映画レビュー】超実写版『ライオン・キング』は脅威の映像美! 本当にアフリカにいる気分になるけど物語は少し惜しい部分も…!
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは『ライオン・キング』(2019年8月9日公開)です。今年に入ってディズニー・アニメーションの実写映画は『ダンボ』『アラジン』に続いて3作目。でも本作はただの実写映画ではありません。なんと超実写映画!
では、まず物語からいってみましょう。
【物語】
アフリカ・サバンナの偉大なる王、ムファサに息子のシンバが誕生。好奇心旺盛でヤンチャなシンバは父のムファサのようなライオンになることが夢。「自分だって凄いんだ」と、勇気あるところを見せたくてたまらない。そんなシンバを利用しようと近づいてきたのは叔父のスカー。兄のムファサの地位を妬んでいたスカーは、ムファサの跡継ぎのシンバに「勇気を示せるいい場所がある」とある場所と勧めますが、そこは危険極まりないハイエナ軍団の巣窟だったのです!
【これがCGアニメーションなんて!すごすぎる映像】
映像がスゴイという評判は聞いていたのですが、想像以上でした。スクリーンに広がる壮大なサバンナの大地、ムファサたちライオンファミリーの姿はドキュメンタリーを見ているようで「こんなに動物たちに肉迫して、演技させるなんて、どうやって撮影したんだろう」と思ったら、フルCG!
CGだと言われて映像を目にしても、まだ信じられないという……。動物や大自然の映像は超リアル。その上で、イボイノシシのプンバァやミーアキャットのティモンやハイエナたちが表情豊かにはしゃいだり、怒ったり、悲しんだり、憎しみを募らせたりという大熱演を見せるのですから、まさに映像マジック。CGアニメーションの進化は、こんなところまできたか~という感じです。
【普遍的なオリジナルの物語は完璧ゆえにアレンジできなかったか】
『ライオン・キング』のオリジナルアニメーションは1994年度の作品。25年前の作品ですから、本作では多少アレンジを施したかと思いましたが、オリジナル版に忠実に再現していました。
ムファサはシンバに「世界は繊細なバランスで共存している。真の王は何かを奪うのではなく何かを与えるのだ」と教えますが、この言葉は現代でも十分通じるし、父を失ったシンバがいくつもの障害を乗り越えて成長し、ライオン・キングになるという物語はシンプルゆえに、下手にアレンジする必要がなかったのかもしれません。
……が、個人的には少々物足りない感もありました。
映像がこれだけ進化し、素晴らしい世界を構築しているのですから、シンバの冒険譚の中にもうひとひねりエピソードがあったほうがよかった気がします。
そして、物語をかきまわすのは悪役のスカーなのですが、圧倒的な強さを感じないのが惜しい! スカーの内面をもっと深堀りして、悪役としての輝きを見せてくれたら、より手に汗握る物語になったのではないかなと思いました。
【エルトン・ジョン×ビヨンセ! スター競演の音楽が圧巻】
なんだかんだと書きましたが、あの圧巻の映像美は絶対にスクリーンで見るべきだと思います。サバンナの大自然はもちろん、チビッコ時代のシンバが可愛くて。そして本作ではビヨンセとドナルド・グローヴァーがデュエットした名曲「Can You Feel the Love Tonight(愛を感じて)」を作ったエルトン・ジョンは、自身が歌うオリジナルソング「Never Too Late」を本作のために書き下ろしました。これまたいい曲なのでサントラも買いですよ!
執筆:斎藤 香 (c)Pouch
『ライオン・キング』
(2019年8月9日全国公開)
監督:ジョン・ファヴロー
声の出演:ドナルド・グローヴァー、セス・ローゲン、キウェテル・イジョフォー、アルフレ・ウッダード、ビリー・アイクナー、ジョン・カニ、ジョン・オリヴァー、フローレンス・カサンバ、エリック・アンドレ、キーガン=マイケル・キー、ビヨンセ・ノウルズ=カーター、ジェームズ・アール・ジョーンズ
日本語吹き替え版:賀来賢人、門山葉子、熊谷俊輝、小林星蘭、佐藤二郎、亜生(ミキ)
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