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【本音レビュー】蜷川実花の最新作『Diner ダイナー』 / 藤原竜也をはじめとした豪華出演者の中で最も輝いたのは本郷奏多でした

   


【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは蜷川実花監督、待望の新作映画『Diner ダイナー』(2019年7月5日公開)です。ホラー作家・平山夢明の同名小説の映画化で、私は原作未読で映画を鑑賞しました。

“殺し屋専門のレストラン”を舞台に、蜷川監督の独特のヴィジュアルが貫かれながらも、エグいバイオレンス映画に仕上がっています。では物語から。

【物語】

友達もいない孤独な人生を歩むオオバカナコ(玉城ティナ)は、怪しいバイト募集に応募し、まんまとギャング組織に捕らえられてしまいます。しかし「料理なら何でもできる」と命乞いをした彼女は、元殺し屋の天才シェフ、ボンベロ(藤原竜也)の殺し屋専門食堂に送り込まれます。

ウェイトレスとして勤めることになったカナコですが、やってくるのは殺し屋とあって、狂暴な客に振り回されたり、襲われそうになったりと恐ろしい目に……。やがて店では、敵対する殺し屋同士の壮絶な戦いが繰り広げられるのです。

【不気味な存在感を放つ食堂】

蜷川監督の映画なので、あの赤を基調にした独特の色彩がスクリーンに広がるのだろうなと想像はしていましたが、想像以上に真っ赤な映画でした。個人的には『さくらん』『ヘルタースケルター』以上に蜷川監督らしいヴィジュアルが炸裂していたと感じます。

おそらく前2作は女性が主人公で、その生きざまにスポットを当てていたので、ヴィジュアルはヒロインを美しく引き立てる背景でした。でも本作は男性の藤原竜也が主役で、彼のレストランで次々と起こるバイオレンスが一番の見せ場。ボンベロと同じかそれ以上の存在感を放つのがこの食堂であり、もはや主演といってもいいかも。蜷川監督の象徴ともいうべき「赤」がこの映画では「血の色」として象徴的に使われているのです。

【クレイジーなキャストの中でも光る本郷奏多】

蜷川監督の映画にはあまりフツーの人は登場しませんが、本作はこれまでで一番エキセントリックで狂気の世界へと突っ走っていく登場人物ばかりです。ヒロインのオオバカナコだけが比較的普通の女の子で、おそらく彼女の目線と観客の目線が重なるように演出されていたと思います。

唯一安心できる存在殺し屋のスキン(窪田正孝)に少し気を許したり、筋肉自慢のブロ(武田真治)に襲われかかったり、彼女が次から次へと大変な目に合うたびに見ている方も「ヒーッ!」とビビるという……。

個人的にいちばんお気に入りの殺し屋はキッド(本郷奏多)ですね。金髪の美少年なのですが、実は殺し屋の中でいちばんのサイコ男子。全身整形とホルモン注射で子供のまま大人になったキッドの可愛い顔と残酷な殺しのギャップが最高! 本郷さんも嬉々として殺し屋を演じており、蜷川監督は本郷奏多の使い方が上手いな~と思いました。

【元殺し屋・ボンベロが優しすぎる気も…】

ただ、気になったのは、殺し屋だらけのレストランで「カナコはどんな残酷な目にあってしまうのかしら、怖い……」と身構えていたのですが、意外とボンベロが彼女に優しいんですよね……。

カナコが彼の大切にしているものを隠したから、うかつに手を出せなくなった……という理由はあるのせよ「そのありかを吐かせる方法なんていくらでもあるんじゃない?」と思ってしまいました。どこまで原作通りなのかわからないのですが、そこがちょっと物足りなかったです。


でも計算されたヴィジュアルは強烈な印象を残すし、藤原竜也をかっこよく魅せることに蜷川監督は力を注いでいたと思うので、そういう意味ではよかったのかも。藤原さんクールで残酷だけどカナコにはちょっと情を見せたりして、確かにイケてましたから。

女性監督のバイオレンス映画というのも珍しく、これをきっかけにアクション映画を撮る女性監督がどんどん増えるといいなと思いましたね。そういう意味でも本作は挑戦作。蜷川実花好き、バイオレンス映画好き、エグい映画が好きな人は必見。独特の世界観を楽しんでください。

執筆:斎藤 香 (c)Pouch

Diner ダイナー
(2019年7月5日よりTOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:蜷川実花
原作:平山夢明『ダイナー』(ポプラ社「ポプラ文庫」)
出演:藤原竜也、玉城ティナ、窪田正孝、本郷奏多、武田真治、斎藤工、佐藤江梨子、金子ノブアキ、小栗旬、土屋アンナ、真矢ミキ、奥田瑛二

(C)2019 「Diner ダイナー」製作委員会
(C)2019 蜷川実花/映画「Diner ダイナー」製作委員会

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