【本音レビュー】映画『十二人の死にたい子どもたち』は、集団自殺を望む若者たちの物語 / だけど肝心の死にたい理由にモヤモヤ…
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは、冲方丁(うぶかたとう)の同名著作を堤幸彦監督が映画化した『十二人の死にたい子どもたち』(2019年1月25日公開)です。集団安楽死をするために集まった若者たちの「なぜ死にたいのか」という謎と13人目の死の謎を密室で解き明かしていく青春ミステリーです。まずは物語から。
【物語】
「集団安楽死」のサイトを通して、廃病院に集まった若者たち。しかし、12人のはずが13人目の参加者が集合場所にいました。しかも、その人物はすでに死んでいるのです……。
12人は混乱し「もしかしたら他殺かもしれない」と考えます。しかし、病院のセキュリティは完璧で部外者は入ることができない。ということは、犯人は12人の中にいる? 彼らはそれぞれ疑心暗鬼になりながらも13人目の死の謎を推理することになるのですが……!
【意外と本格派の謎解きミステリーだった!】
原作は未読のまま、映画を鑑賞したのですが、なかなかビックリの展開でありました。未成年の男女12人の安楽死にはルールがあり、12人の意見が一致しないと実行にうつせない。つまり、ひとりでも「アンタの動機、死ぬほどのことでもないじゃん」と思ったらダメなんです。そこで彼らは死のプレゼンを展開していく……と思ったら、予想外の死体が転がり込んできたため、物語は犯人捜しのミステリーへと変化していくのです。
【簡単に死を選ぶ子供たちにモヤモヤ…】
そんな感じで謎解きメインの映画になっていくのですが、自殺願望のある12人の動機はきちんと明かされます。自ら命を絶つわけですから、動機は重要で、どれだけしんどい思いをしているんだろうと思ったのですが、個人的にはそこの描き方が弱いと感じたのです。
主に虐待、いじめ、復讐、大切な人の死などが動機ですが、めちゃくちゃ闇を抱えているような子がいなかったんですよね。こちらの胸まで痛くなるような、突き刺さってくるような、そういう動機を抱えてる子はいなかったように感じてしまったのです。
ある意味、若いからこそ生を軽く考えているのかもしれないけど、彼らの死への向き合い方が浅く感じてしまい、そこはちょっと残念でした。
【実力派の若手俳優が結集!】
ただ、今、期待されている若手俳優たちの演技を見られる楽しみはありましたね! 本作では高杉真宙、新田真剣佑、北村匠海、杉咲花、黒島結菜、橋本環奈という豪華共演が話題になりました。売れっ子の6人をよくぞ集めたな~という感じですよ。中でも真剣佑さんのカメレオン俳優ぶりはスゴかった!
2018年は映画『OVER DRIVE』ではイケイケなレーサー、『劇場版 コード・ブルー -ドクターヘリ緊急救命-』では婚約者との愛に苦悩する男を演じて涙を誘っていましたが、本作ではまるで別人! 探偵のように謎を解いていく理系男子役で、最初は「誰?」と思ったくらい雰囲気をガラリと変えていました。真剣佑さんの演技力は見る価値ありです!
映画『十二人の死にたい子どもたち』は、大人と子供では見た後の感想がまったく違うかもしれません。大人には刺さらなかった彼らの言葉や行動も十代の男子女子が見たら大共感!ということがあるかも。
ひょっとしたら、この映画は若さを測るリトマス試験紙的な役割を秘めているのかもしれません……。
『十二人の死にたい子どもたち』
(2019年1月25日より、丸の内ピカデリーほか全国ロードショー)
監督:堤幸彦
出演:杉咲花、新田真剣佑、北村匠海、高杉真宙、黒島結菜、橋本環奈、吉川愛、萩原利久、渕野右登、坂東龍汰、古川琴音、竹内愛紗、とまん
(C)2019「十二人の死にたい子どもたち」製作委員会