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村上春樹を敬遠している人ほど読んでほしい『村上春樹語辞典』/ 「比喩」「動物」「料理」や「やれやれコラム」など見どころいっぱいです

   


以前 Pouch でもご紹介した『村上春樹語辞典』の中身があまりにも気になったので、さっそく購入。じっくり熟読してみたわたし。

すると……これまでちょっぴり苦手意識を持っていた村上作品に対するイメージが、みるみる変わってきたことに驚いたんです。

最初に白状しておくと、わたしが読んだことのある村上作品は、ド定番ともいえる『ノルウェイの森』と『1973年のピンボール』だけ。

この2作品を読んでみて抱いた感想は、「オシャンティーな言い回しが鼻につく」「登場人物がナルシストっぽい、そしてモテすぎ」「展開が非現実的」の3点。このように感じてしまったためか、なんとなく苦手意識を持ってしまって、気がつけば “読む前にスルーする” クセが身についてしまったんですよね。

ですが、『村上春樹語辞典』がわたしの大いなる誤解を解いてくれました。

【もしかしてわたし…誤解してたかも!?】

そもそも大きな過ちであり悲劇だったのは、最初に手を付けた村上作品が『ノルウェイの森』だったこと。『村上春樹語辞典』によれば、村上さんの作品におけるキーワードは

・毎度、謎の女が出てくる
・「こちらの世界」に住む主人公が「あちらの世界」に行って帰ってくる、異界巡りの物語である
・猫、妻、恋人、さらには色にいたるまで、さまざまなものが忽然と消えがち

といったもの。

ほかにもまだまだ特徴はありますが、読んでおわかりのとおり、村上作品最大の特徴は “ファンタジー要素が強い” という点。リアリズム的な観点から生まれた『ノルウェイの森』は、大ヒット作ながらも例外的な作品なので、 “入口” としてはふさわしくなかったのかもしれません。

【「無」「シュール」「ジャズ」「酒」って好きな要素ばっかりなんですけど!!!】

そのほかにも、

・作品そのものがどこか「ドーナツの穴」(無)のような存在
・不可思議なことが不可思議なまま終わっていくシュールな世界観
・村上さん自身がかつてジャズバーを経営していたせいか、ジャズとカクテルがたくさん出てくる

といった特徴が村上作品にはあって、「これ知れば知るほど、わたしの好きな世界観やないか……!」という気づきを得たんです。

【関わりのある人たちが、わたしの好きな人ばかり!!!】

また『村上春樹語辞典』冒頭に掲載されている「村上春樹という名の樹」という大きな樹の絵には、村上作品に関りの深い文学や映画、音楽や哲学について書かれているのですが、ここで名前が挙げられているのは

・川上未映子さん(日本文学)
・小川洋子さん(日本文学)
・ウォン・カーウァイさん(アジア文学/ 映画)
・デヴィッド・リンチさん(アメリカ映画)
・ドストエフスキーさん(ロシア文学)
・河合隼雄さん(哲学)

といった面々で、わたしが敬愛してやまない人たちばかりだったんです。もうね、「わたしはこれまで村上作品に対してどんだけ勘違いをしてきたんだ~~~!」と愕然としてしまいましたよね。なんていうか、めちゃめちゃ損した気持ちになったわ……。

【「比喩」「動物」「料理」など見どころいっぱいです】

というわけで『村上春樹語辞典』は、わたしのように「ほんの少し村上作品に触れただけですべてを理解した気になっていた」という人にとっては、かなりおススメ。

村上作品に関わりの深い言葉を辞書のように引くことはできるのはもちろん、劇中に登場する独特の “比喩” (「寝不足のおかげで顔が安物のチーズケーキみたいにむくんでいた」など)や不思議な “動物たち” (名前を盗む「品川猿」など)、聖地巡礼には欠かせない “村上春樹おさんぽMAP” といった読み物が満載。

さらには読み終わった後に猛烈にお腹がすいてきそうな “料理” などが美しいイラスト付きで紹介されているので、村上ワールドへの入門書としては最適なんじゃないかと思うんです。

それこそ六本木ツタヤが書いた本書の紹介文にあったように、

「この本を読めば、この作家の小説を読まなくったって、きっと語れるはずだわ」

といった印象をも持つくらいの詳しさなので、 “村上作品についてなんとなく知った気になれる” というのも大きな特徴かも!?

【「やれやれ」コラムがサイコーです】

またコラムも充実しておりまして、ツボに入ってしまったのは、最後のほうに載っている「『やれやれ』について語るときに我々の語ること」という題のコラム。

村上作品といえばこのフレーズ!ともいうべき「やれやれ」が初登場した本や、「やれやれ」言い続けている作品など、どこもかしこも「やれやれ」尽くし

「やれやれ」が持つ意味についても考察されているほか、もはや「『やれやれ』は村上さんにとっての存在証明と呼んでいいのかもしれない」という結論にまで至ってしまっているので、村上作品における「やれやれ」について深く知りたい方にとっては必読といえましょう。

【詳しいけれど、中立的な視点で書かれているのが◎】

『村上春樹語辞典』は 、世界中の “ハルキスト” たちにとっての聖地・ブックカフェ「6次元」の店主であるナカムラクニオさんと、運営者の道前宏子さんによる作品ですが、“ハルキスト的視点” に偏っていないフラットな印象を覚えました。

村上作品に先入観を抱いている人こそ、まずはこの1冊を読んでみるべし☆

参考リンク=村上春樹語辞典
撮影・執筆=田端あんじ (c)Pouch

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