【本音レビュー】映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』で、90年代の女子高生の熱き友情と、大人になった彼女たちの切ない人生に涙…!
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは韓国映画『サニー 永遠の仲間たち』(2011)の日本版リメイク『SUNNY 強い気持ち・強い愛』(2018年8月31日公開)です。疎遠になっていた“サニー”というグループの仲間が再結集し、友情を再熱させるストーリー。篠原涼子演じるヒロインの高校時代を広瀬すずが演じたことでも話題の本作。
80年代を舞台にした韓国版を、90年代の日本に置き換えて見事にリメイクしたのは、若者カルチャーを切り取るのが上手い大根仁監督です! では物語からいってみましょう。
【物語】
専業主婦の奈美(篠原涼子)は、高校時代に仲が良かった芹香(板谷由夏)と病院で偶然再会。彼女は末期ガンで入院中でした。「サニーの仲間に会いたい」という芹香の願いに応えようと、奈美は母校に問い合わせたり、私立探偵(リリー・フランキー)を雇ったりして、梅(渡辺直美)、裕子(小池栄子)、心(ともさかりえ)や奈々たちを探します。
梅が見つかり、2人で裕子とも再会しますが、彼女に「もう昔の仲間に会いたくない!」とつっぱねられてしまうのです……。
【2018年から1990年代の青春へジャンプ!】
いい映画でした! 芹香の言葉をきっかけに、友達の居所探しが始まるのですが、そこからたびたび1990年代の高校時代へとジャンプ。奈美が淡路島から転校してきて、芹香たちと仲良くなり、サニーが結成され……という、彼女たちのきらめく青春が描かれるのです。
とにかく派手で騒々しいコギャルたち。教室に入ってきた先生が「教室はキャバクラの控え室ではありませ~ん!」と叫ぶ気持ちもわかる! この時代はまだスマホがなく、メールも一般的ではなく、言葉で伝えるのが基本。だから彼女たちは、ずーっとしゃべっているんですよ。
【主役は90年代の女子高生全員!】
一応、映画の中心人物は奈美で、イケてない彼女がサニーのメンバーの影響を受けていくプロセスは笑いもたっぷりに描かれますが、この映画を見終わって思うのは、主役は90年代の女子高生全員だと思いました。サニーのメンバーはその代表ですね。
劇中、大人になったサニーのひとりが「今の子たちはスマホばかりで静かだ」というようなことをつぶやくシーンがありますが、あの時代の女の子たちが激しくてパワフルだと感じるのは、やはり会話で繋がるのが主流だったからかも。SNSにもいい面はたくさんありますが、女の子のおしゃべりってやっぱり楽しい。見ているだけでも参加している気持ちにさせてくれましたから。
【大人になった“サニー”たちの切ない人生を映し出す】
しかし、この映画は大人になって遭遇する現実の厳しさもしっかり描いています。
高校時代、あんなに輝いていたサニーのメンバーですが、芹香は不治の病、梅はブラック企業で苦しみ、裕子は夫の浮気に悩み、心は夫のDV、自身のアルコール依存症でやさぐれていました。奈々は行方不明……。そして、主人公の奈美もまた、孤独な専業主婦なのです。
「高校時代に夢見ていたことは現実になったのか? 今のあなたは何をしている?」と、自身が問われているような気がしました。
だからこそ、明るい未来を信じて疑わなかった頃の自分に戻れる仲間の存在が、大切だと感じられるのです。学生時代の友達に会いたくなりますよ、ホントに。
【安室奈美恵と小室哲哉の時代】
音楽は90年代一世を風靡した音楽プロデューサー、小室哲哉さんが担当しています。当時大ヒットした安室奈美恵の「SWEET 19 BLUES」「Don’t wanna cry」ほか、小沢健二、久保田利伸、hitomi、TRFなど、まさに90年代のヒットメドレーがたくさん流れて大興奮! 安室奈美恵さんは女子高生のカリスマで、細い眉、ミニスカ、厚底ブーツをみんなマネしていましたからね。アムラー全盛期を描いた映画が、安室奈美恵引退の年の公開になるというのも、なんかミラクルを感じます!
登場人物それぞれが自分の感情に正直で、ベタなくらい熱い友情映画『SUNNY 強い気持ち・強い愛』。「言わなくてもわかるでしょ」というような、空気を読む人間関係ではなく「言わなきゃわかんないじゃん!」という直球の人間関係がとてもすがすがしい。最強の女子友情映画でした。
執筆=斎藤 香 (c)Pouch
『SUNNY 強い気持ち・強い愛』
(8月31日より、全国東宝系にてロードショー)
監督:大根仁
出演:篠原涼子、広瀬すず、小池栄子、ともさかりえ、渡辺直美、池田エライザ、山本舞香、野田美桜、田辺桃子、富田望生、三浦春馬、リリー・フランキー、板谷由夏
(C)2018「SUNNY」製作委員会