【本音レビュー】映画『オーシャンズ8』は女泥棒たちの華麗なる強盗テクが痛快! だけど、あれ? 敵がいない…
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは映画『オーシャンズ8』(2018年8月10日公開)です。大ヒット映画『オーシャンズ11』の女性版で、主役デビー・オーシャン(サンドラ・ブロック)は『オーシャンズ11』のダニー・オーシャン(ジョージ・クルーニー)の妹。彼女がドリームチームを結成して、カルティエの1億5000万ドルの宝石を奪うというのが本作のミッションなのですが……! まず物語から。
【物語】
5年の刑期を終えて出所したデビー(サンドラ・ブロック)は、さっそく相棒のルー(ケイト・ブランシェット)に連絡を取り、新たなミッションをスタートさせます。
彼女が狙うのはカルティエの1億5000万ドルの宝石。人気女優のダフネ(アン・ハサウェイ)が、ニューヨークで行われるファッションの祭典 “メットガラ” でこの宝石を身に付けることになり、デビーが結成したオーシャンズ女子チームは、世界中が見守る超厳戒体制の中、カルティエ強奪作戦を決行するのです。
【デビーのスマートな泥棒テクがお見事!】
冒頭、デビーの泥棒シーンからグっと心を掴まれます。彼女は出所した途端、高級デパートで化粧品をサクっと盗み、高級ホテルのロビーで誰かのスーツケースと上着をサクっと盗み、チェックアウト予定の部屋にサクっともぐりこんで「延泊でお願い」と告げてご宿泊と、スマートに決めてくれます。さすがダニー・オーシャンの妹!
彼女は刑務所で宝石強奪作戦をじっくり練り、出所した途端にミッションをスタート。
デザイナー、ハッカー、ジュエリー職人、盗品ディーラー、凄腕スリなどを集め、それぞれが最大の力を発揮できるように配します。やることが早くめちゃくちゃ頭がいいデビー。彼女は起業したら、相当できる女社長になれそうです。そのクレバーさは「なんで泥棒やっているんだろう、もったいないな~」とさえ思ってしまうほど。
【オーシャンズ女子はプロフェッショナル軍団】
デビーに集められたオーシャンズ女子チームは、インド系、アジア系もいて、人種が様々なところも興味深いです。さらに、職業もハッカーにジュエリー職人に盗品ディーラーに……と、個性豊か。
彼女たちが、メットガラの裏側で、厳重なセキュリティの網の目をかいくぐって宝石を奪うのですが、「なるほどジュエリー職人はここで力を発揮するのね!」というふうに、それぞれが自分の技を使って仕事をこなしていく姿を見るのは痛快。また彼女たちを追っているうちに、計画の全貌が明らかになっていき「そう来たか~」と、デビーの綿密な作戦には感心することしきり。
【でも…ちょっとうまくいきすぎじゃないの?】
と、褒めてきましたが、見ているうちにだんだん「あれ?」と思い始め、見終って思うのは「物足りない……」という感想。正直、すべてがデビーの計画通りにコトが進み、上手くいきすぎるのです。
そもそも、プロフェッショナル軍団といわれた彼女たちのミッションを阻止するのが、メットガラの厳しいセキュリティだけというのが弱い! 例えば、デビーに恨みを持つ人物がいて、彼女たちの先手を打って次々と罠にかけ、オーシャンズ女子絶体絶命!という展開があれば「この最悪の事態をどう乗り越えるのか」と、超ドキドキできたかなと。
もっと「く~っ、お見事! やったねデビー!」みたいな感動が欲しかったです。
でも泥棒の手口、女優陣のファッション、メットガラに登場するカメオ出演のスターたちなど、お楽しみは盛りだくさん。個人的にはデビーの相棒として、完璧なサポートを行うケイト・ブランシェット演じるルーにウットリ。まるで宝塚の男役のようなカッコ良さで、バイクをかっ飛ばす姿が目に焼きついて離れません!
執筆=斎藤 香(c)Pouch
『オーシャンズ8』
(2018年8月10日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:ゲイリー・ロス
出演:サンドラ・ブロック、ケイト・ブランシェット、アン・ハサウェイ、ミンディ・カリング、サラ・ポールソン、アウクワフィナ、リアーナ、ヘレナ・ボナム・カーター
(c) 2018 WARNER BROS. ENTERTAINMENT INC., VILLAGE ROADSHOW FILMS NORTH AMERICA INC. AND RATPAC-DUNE ENTERTAINMENT LLC