綾野剛や北川景子が腹踊りしてサルと戦う!? 狂気の世界『パンク侍、斬られて候』は、スター俳優たちの振り切った怪演が見どころです
今回ピックアップするのは綾野剛主演のアクション時代劇『パンク侍、斬られて候』(2018年6月30日公開)です。町田康の同名小説の映画化作品で、脚本を宮藤官九郎、鬼才・石井岳龍が監督をつとめています。
正直、「こういう映画です」と説明するのが難しいほど個性が強い作品。しかし出演者の豪華さと、他作品では見れない激しすぎる演技は見ものです! まずは物語からいきましょう。
【物語】
主人公は掛十之進(綾野剛)というの浪人。彼は黒和藩という藩に入りたいがために、「自分が新興宗教『腹ふり党』の脅威から黒和藩を守る」とハッタリをかまして、藩内に居場所を確保しようとします。
しかし、新興宗教『腹ふり党』は既に解散していました。このことが黒和藩にバレたら自分の立場が危ない……そこで『腹ふり党』元幹部の茶山半郎(浅野忠信)をたきつけて騒動を起こすのですが、掛十之進の想像をはるかに超える大騒動に発展し、なぜかサルの大群と戦をすることになるのです……。
【腹ふり党の腹踊りは狂気にみちたインド映画のよう】
前半は、掛十之進が黒和藩に入り込もうとする野心的な行動が中心。しかし、その野心はからまわり。さらに新興宗教の「腹ふり党」が登場すると、物語はどんどんおかしな方向へと走り始めます。
「腹ふり党」とは、とにかく狂ったようにお腹を振りながら町を練り歩く新興宗教団体。特に黒和藩の幕暮孫兵衛(染谷将太)のハマりっぷりはハンパなく、染谷さんが腰痛にならないか心配になるほど、腹を振りまくっていました。この腹ふり党の信者が、どんどん増殖してスクリーンいっぱいに広がり、さながらインド映画の群衆ダンスシーンのよう! でもインド映画のダンスシーンと違うのは、あちらは華やかですが、本作は狂気をはらんでいるので、ヤバイ感が充満していることです。
【北川景子に染谷将太、役者たちの振り切った怪演を見よ!】
「くせ者12人」というキャッチフレーズがつくだけあって、見どころはなんといっても俳優たちの怪演。
綾野剛さんが主演ですが、この映画は、戦に関わる12名全員が主役のようなもので、みなさんハマリ役です。特に浅野忠信さんは、元SMAPの稲垣吾郎、草彅剛、香取慎吾の出演のオムニバス映画『クソ野郎と美しき世界』でもイカれた極悪人を怪演していましたが、今回はあの役を上回るモンスター演技を披露しています。
東出昌大さんは、正論しか言わない堅物の殿様役なのですが、狂気の世界では、その真面目さが異常に見えます。そして北川景子さんは、奇妙なダンスを披露する茶山のアシスタントとして、新たな一面を炸裂させています。
綾野さんはずるがしこい小悪党感を出しつつ、殺陣のシーンではスピーディな刀裁きでかっこいい……のですが、周りが強烈過ぎて、かっこいいだけでは太刀打ちできない感じもありました。
【強烈な石井岳龍ワールド】
でもいちばんパンクなのは石井岳龍監督でしょう。80年代に石井聰亙の名でアンダーグラウンドな自主制作映画でカルト的な人気を誇り、御年61歳でもこの超尖がった演出は素晴らしい。石井監督の強烈な世界観にしびれました。
正直、個性が強烈過ぎて、誰にでも勧められる映画ではないです。ハマれば「大好き!見たことのない世界へ連れてってくれた」と感動しますが、「意味不明……」と思う女子もいるでしょう。これはもう博打です。見るときは覚悟して見てください!
執筆=斎藤 香(C) Pouch
『パンク侍、斬られて候』
(2018年6月30日より、新宿バルト9ほか全国ロードショー)
監督:石井岳龍
出演:綾野剛、北川景子、東出昌大、染谷将太、浅野忠信、永瀬正敏、村上淳、若葉竜也、近藤公園、渋川清彦、國村隼、豊川悦司