ギャグとラブのバランスが素晴らしい映画『50回目のファーストキス』は原作を丁寧に描いた作品 / 長澤まさみと山田孝之の告白シーンも見所だよ
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、レビューをします。
今回ピックアップするのは映画『50回目のファーストキス』(2018年6月1日公開)です。主演は山田孝之と長澤まさみ。そして監督はドラマ『勇者ヨシヒコ』シリーズや映画『銀魂』などの人気監督、福田雄一。今までコメディ作品を中心に作ってきた監督がまさかの正統派ラブストーリー映画を演出? 皆目見当がつかずに見に行ったのですが……福田監督の演出力に脱帽しました。まずはあらすじから。
【物語】
ハワイでコーディネーターとして働く弓削大輔(山田孝之)は、ある日カフェで藤島瑠衣(長澤まさみ)と出会い、意気投合。翌日も彼女に会いたくてカフェに行き、瑠衣に声をかけますが「アンタなんて知らない」とドン引きされ、大輔はショックを隠せません。
そのとき大輔はカフェのスタッフから瑠衣の障害のことを聞きます。彼女は交通事故の後遺症により、1日で新しい記憶を忘れてしまう短期記憶障害を患っていたのです。瑠衣の記憶は父(佐藤二朗)の誕生日で止まったまま。家族は彼女のために同じ毎日を繰り返していたのです……。
【ハリウッド映画のリメイク作品に福田監督が挑戦】
映画『50回目のファーストキス』はドリュー・バリモアとアダム・サンドラー共演作『50回目のファースト・キス』(2004年)の日本版リメイク作品です。映画を見る前は、福田監督が脚色するから、もっとギャグよりのハチャメチャなラブコメになると思いましたが、意外にもそうではありませんでした!
翌日になったら、前日の記憶がスッポリ消えてしまい、進展が望めない瑠衣との恋を大輔は決して諦めません。そこがこの映画の重要なところで、福田監督はオリジナル作品の大切な部分をとても丁寧に描いています。
ある日、アクシデントで瑠衣が真実を知ったときから、大輔の渾身の瑠衣愛がバクハツ。彼は周囲の人の思いやりや自分と瑠衣の愛情あふれる日々を映像で残し「みんなあなたのことを愛しているよ~」と彼女にメッセージを送るのです。
福田監督は、このあたりの感動演出がとてもうまくて、ワタクシ、瑠衣の友達になった気持ちになり「よかったねえ、いい男に愛されて」とずっとウルウル状態でしたよ~。
【ギャグは合間にぎっしり詰め込みました!】
「福田映画なのに、笑いは全然ないの?」とご心配のみなさん。そんなわけありません! 今回はラブストーリーの合間にギャグをギュ~っと詰めこんでいます。
例えば、大輔はあの手この手を使って、毎日瑠衣を口説くのですが、これがすごく楽しい!
あるときは(わざと)暴漢に襲われ、あるときは(わざと)車がエンストして……と彼女の気を引くために必死! 瑠衣のリアクションも毎日違うので、山田孝之×長澤まさみのおかしな寸劇を見るようです。
なかでも、注目して欲しいのが瑠衣の弟・慎太郎(太賀)の存在。筋肉バカすぎるムキムキ男子姿でグイグイと迫ってくるのですが…正直暑苦しいことこの上ない!
マッチョアピールの慎太郎に瑠衣の父(佐藤二朗)がツッコミを入れると、見事なボケとツッコミが成立。しんみりしそうなシーンでも、慎太郎が登場するとプっと笑えるんですよ。
【福田監督の演出力に脱帽です!】
正直、これまで私は福田監督のアクの強いギャグ映画がちょっと苦手でした。でも本作を見て、監督の力量に感服! オリジナルの映画の世界を大切に忠実に脚色しつつ、「福田印」の笑いの爪痕をしっかり残し、感動と笑いのさじ加減が絶妙なんです。
ちなみに山田孝之さんは長澤まさみファンという噂がありますが、この映画ではたくさんキスシーンがあります。だって毎日出会って恋をして、毎日ファーストキスするのですから~。山田さん良かったですね!
「ラブストーリーが苦手」という男子は多いようですが、福田印のギャグ要素効果で男子もきっとOKなはず。ハワイの海、夜空、星、緑、とヴィジュアルも最高だし、デートムービーにもバッチリです!
執筆=斎藤香(c)Pouch
『50回目のファーストキス』
(2018年6月1日より、TOHOシネマズ日本橋ほか全国ロードショー)
監督:福田雄一
出演:山田孝之、長澤まさみ、ムロツヨシ、勝矢、太賀、山崎紘菜、大和田伸也、佐藤二朗ほか
(C)2018 『50回目のファーストキス』製作委員会