岡田准一演じる石田三成の純粋で正義を貫く姿にグッとくる…話題作『関ヶ原』は見所盛りだくさんの映画でした
【最新シネマ本音レビュー】
映画ライター斎藤香が公開映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。
今回ピックアップする映画は『関ヶ原』。司馬遼太郎のベストセラー同名小説を、原田眞人監督(『駆込み女と駆出し男』『クライマーズ・ハイ』など)が演出した時代劇です。
8月26日から公開されたこの作品は、公開週の興収ランキングで初登場堂々第1位!(共同通信調べ)。
石田三成サイドから描いた“関ヶ原”の物語で、岡田准一が石田三成、役所広司が徳川家康を演じています。あの合戦の裏にはどんな駆け引きが? 公開後に劇場で見た私が本音レビューさせていただきます。まずはサクっと物語から。
【物語】
豊臣秀吉(滝藤賢一)の家臣、石田三成(岡田准一)は、秀吉の体調が思わしくないなか、もしものことがあっても、豊臣家の権力を守ろうと固く決意していました。一方、五大老の筆頭であり、東で一大勢力を持つ徳川家康(役所広司)は、秀吉の後に天下を取ろうと、水面下で人脈を広げていました。
秀吉の没後、東の家康、西の三成のにらみ合いは激化していき、それはやがて関ヶ原の合戦へと繋がっていくのです。
【天下分け目の勝負に勝つ男とは】
映画は、善悪がはっきり描かれています。石田三成は自分を認めてくれた秀吉に仁義を通し、豊臣家を守りたい。しかし、家康は野心家で、権力を握りたく、そのためなら裏切りでも何でもする策士です。善は石田、悪は家康というわけですね。
関ヶ原の闘いで家康が勝つのは誰もが知るところですが、石田三成の目線から描いた『関ヶ原』なので、三成は悲劇のヒーロー的に描かれているのかなと想像していました。しかし意外にも、三成の性格がこの戦の足を引っ張ったかなと思わせるシーンがあり、そこが私には興味深かったです。
【純粋すぎる武将・三成】
三成、人の話を聞かないんですよ。自分の考えに反する意見はさえぎる、主張を押し通す。だから軍事会議でも変な空気になったりして。これではついて行かない者も出てきます。けっこう思い込みが激しいので、見ていてけっこうヒヤヒヤしました。「もっとちゃんと話を聞こうよ」みたいな。
三成は「不義に負けない」と力強く闘いを挑みますが、志の高さだけでは勝てないのが戦。確か「純粋すぎる」と言われるシーンがありましたが、頭も堅すぎましたね。
【合戦シーンは迫力あるけど】
おそらく原田監督は、この時代の知識に長けていて、原作も読み込んでの映画化だと思うのですが、原作未読、「関ヶ原」の闘いのことをよくわからない私は、三成と家康の戦までの駆け引きが目まぐるしくてわかりにくかったです。
この闘いの知識がないまま見た自分がいけないのかもしれませんが、もう少し噛み砕いていただきたかった。原作を熟読している方や歴史好きな方には、たまらなく面白いであろう、それぞれの策略なども「?」なことが多かったです。
加えて、合戦シーンはもっとわからない。迫力は凄いけど、どちらが三成軍で、どちらが家康軍かがわからないので、残念ながら、あまりハラハラしなかったです。
そして、もうひとつ。三成と伊賀の忍び・初芽(有村架純)の淡い想いはけっこうクローズアップされており、ここで三成の優しさが描かれていますが、個人的には、天下分け目の合戦に恋はいらん! と思いました。
【岡田准一が演じる石田三成】
岡田准一は、NHK大河ドラマ「軍師官兵衛」の影響か、ここ数年、時代劇や昭和を舞台にした骨太な物語への出演が増えています。
もう全国区の俳優になっていますから、おじいちゃんおばあちゃん世代も知っているという強みもあり、決して「ジャニーズを主役にすれば女子が集まる」的な理由でのキャスティングじゃないと思います。それに石田三成の正義を貫く姿は、硬派なイメージの岡田氏にピッタリ。
そんな岡田准一ですが、20代の頃は宮藤官九郎のドラマ「木更津キャッツアイ」などに出ていたんですよねえ。
ああ、ぶっさん(「木更津キャッツアイ」で演じた役)が懐かしい……。ああいうリアルな若者役も、また演じていただきたいです。
【連続テレビ小説のあの二人が!】
そのほか、まず家康は役所広司。完全な悪役で登場しますが、そんな家康を嬉々として演じており余裕が感じられました。個人的に「お!」と思ったのは、小早川秀秋演じる東出昌大と、北政所演じるキムラ緑子。二人の共演シーンは連続テレビ小説『ごちそうさん』を思い出してしまい、ニヤニヤしてしまいましたよ。
原田監督のフィルターを通して描かれた映画『関ヶ原』。これから見に行く方は「関ヶ原の闘い」について、少し予習していったほうが、より映画を楽しめるかと思います。
執筆=斎藤 香 (C)Pouch
『関ヶ原』
(2017年8月26日より、全国ロードショー)
監督・脚本:原田眞人
原作:司馬遼太郎『関ヶ原』(新潮文庫刊)
出演:岡田准一、有村架純、平岳大、東出昌大、北村有起哉、伊藤歩、中嶋しゅう、音尾琢真、松角洋平、和田正人、キムラ緑子、滝藤賢一、松山ケンイチ、役所広司
(C)2017 「関ヶ原」製作委員会