【直撃】杏さん&笹野高史さんに聞く! 映画『オケ老人!』のウラ話 /「杏さんは主演の気負いが全然ない」と笹野さん絶賛…その理由とは?
[公開直前☆最新シネマ批評・インタビュー編]
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品の俳優を直撃インタビューします。
今回直撃インタビューしてきたのは、映画『オケ老人!』(2016年11月11日公開)の杏さんと笹野高史さんです。
音楽が大好きで、老人だけのアマチュア楽団に間違って入団することになった数学教師を演じる杏さんと、その楽団の団長を演じる笹野さん。お二人に撮影の裏話などをお伺いしてきました。ではまず、物語からご紹介しましょう。
【物語】
梅が丘高校に赴任してきた数学教師の千鶴(杏)は、ヴァイオリンを演奏したいという気持ちから、地元で有名な「梅が丘フィルハーモニー」に入団希望の連絡をし、OKの返事をもらいます。
ところが練習場所に行ってみると、楽団員はご老人ばかり……。実は梅が丘にはもうひとつの楽団があり、千鶴は間違えて老人ばかりの「梅が丘交響楽団」(略称・梅響)に連絡をしていたのでした。
指揮者の野々村(笹野高史)のもと、老人たちは楽しそうに演奏するものの、正直かなり下手! けれども千鶴を大歓迎してくれる楽団員。自分の勘違いを言い出せないまま、千鶴は心臓に持病を持つ野々村の代わりに指揮者になるはめに……。
【指揮棒を振りすぎて腱鞘炎に!】
勘違いから老人オーケストラに入団したヒロインが、悪戦苦闘しながらも団員たちとの絆を深め、みんなで素晴らしい音楽を奏でようと成長していく姿をコミカルに描いた本作。
千鶴役の杏さんと野々村役の笹野さんは、“梅が丘交響楽団の仲間”としてコミュニケーションはバッチリの様子です。
――千鶴さんと野々村さんは、劇中、お二人とも指揮者とヴァイオリン奏者を経験されましたが、準備が大変だったのではないでしょうか。それぞれの役作りについて教えてください。
杏さん(以下、杏)「千鶴は20代の女性で、それほど突出した才能や個性のある女性でなく、年相応の普通の女性。役作りではとにかくヴァオリンの説得力を大事にしたかったので、まずはヴァイオリンの練習を最優先にしていました」
笹野さん(以下、笹野)「私も野々村は指揮者なので、指揮の練習に全力を注ぎました。でも練習初日から頑張りすぎて、肩が上がらなくなり腱鞘炎になってしまいました(笑)。指揮棒も3本購入しましたよ。でもね、私は指揮者を降りて、ヴァイオリンを演奏することになるので、あの練習は無駄だったのかと思ったりもしたんですよ」
杏「途中から私が指揮者で、野々村さんがヴァイオリン奏者になるので。チェンジするんです」
笹野「しかし、無駄だと思ったらあにはからんや、指揮の練習を一生懸命したおかげで、千鶴の指揮がわかるんですよ。ここはこう演奏すればいい、ここでヴァイオリンが入るとかそういうのがわかる。指導してくださった先生はさすがです。そこまで考えてくださったんですね」
【杏さん初主演映画なのに、頑張ってない?】
――撮影中のエピソードで印象深いことはありますか?
杏「野々村さんが病室に入るときの笹野さんと、左とん平さんのシーンがすごくおもしろかったのが印象に残っています。一緒のシーンに出演していた黒島結菜ちゃん(野々村さんの孫・和香役)の素で笑っているシーンが映画で使われたんですよ。結菜ちゃんも “素で笑っちゃった!” と言っていて。笹野さんと左とん平さんが笑わせてくれました」
笹野「ある日、杏ちゃんがこう言ったんです。“私、この映画が初主演なんです” って。私はこれにビックリしまして。何度も主演映画を見ていたような気がしていたけど、そういえば初主演だったんだと。それを言ったときの杏ちゃんの顔とか風情とか忘れられなくて。そういえば初主演のわりに頑張っていなかったなあとか……。」
杏「え、頑張っていなかった? ちょっとちょっと……(笑)」
笹野「変な意味じゃなくて、杏ちゃんは普通なんですよ。カメラの前でもカメラがまわっていなくても、自然体なんです。“初主演です!頑張ります!” という変な気負いが全然ない。自然に演じ、普段も普通に穏やか。そこがいいねえって、みんなで言っていたんです。あの普通さが杏ちゃんの魅力だねって」
杏「そういうことなのですね(笑)。千鶴は現実とかけ離れていない、隣に住んでいる女の子という感じだったので自然体で演じられたのだと思います」
【笹野さんの意外な特技?】
――杏さんは、大先輩の笹野さんと共演して、教えていただいたことなどはありますか?
杏「笹野さんは、携帯電話などのメディアにすごく詳しくて、私の知らないアプリとか機能とかいっぱいご存じなので、いろいろ教えていただきました」
笹野「そうじゃなくて、もっと芸に関することとかない?」
杏「もちろんありますけど、でもそっちの衝撃が強くて(笑)。こんなにいろんなことご存じで使いこなしているんだ! と」
――携帯機能を熟知してらっしゃるとは驚きです。そういえば、笹野さんは私物のトランペットを撮影に持参したそうですね。
笹野「はい、私の家には楽器がたくさんありまして。映画に使えないかと“私の楽器もよかったら使ってください”と申し出たんですよ」
杏「楽器を持っている方って、そんなにいませんからね」
笹野「楽器集めるのが趣味なんです。フルートは映画で使ってもらえたみたいですよ」
――映画では、野々村さんから千鶴に指揮者が変更になりますが、指揮棒は杏さんにお渡しできたのですか?
笹野「本当はそうしたかったんですけど、本当の指揮者が使用している指揮棒っていうのはかなり使い込んでいて、くたびれているんですよ」
杏「指揮者の方が使用している指揮棒は、親指にあたるところが凹んでいるんです」
笹野「だから僕がネットで購入したものは、撮影で使用することはできなかったですねえ」
【こんな風に年を重ねていきたいと思える映画】
――完成した映画を見た感想はいかがでしたか?
杏「試写室で見させていただいたのですが、音の厚みがあって、これはぜひ音響効果のよい劇場で見たい! と思いましたね」
笹野「私は試写で見ても、自分を見て恥じ入るばかりで純粋に作品として見られないんですよ。だから封切られて、お客さんと一緒に見て、初めて作品を楽しめるのではないかと思います」
杏「それは私もありますね。自分が出演した作品は客観的に見られなくて、もはやおもしろいかどうなのかさえ自分ではわからない。だからこそ映画を見た観客の方に、おもしろかった! って言っていただけると、本当に良かったと思います」
――おもしろかったです! 人生はいつスタートを切っても遅くないという、元気が出る映画でした。
笹野「何かを始めるのに年齢は関係ありません。この映画で描かれる、年齢は自分で決めるというスタンスはいいですね」
杏「梅が丘交響楽団の団員のひとり、戸山を演じている石倉三郎さんが、“俺は今回、老け作りしているから。老人役なだけで老人じゃないから” とおっしゃっていたんですが、楽団員を演じる皆さん若くて、すごい熱量にあふれた撮影現場でした。好奇心、探究心、童心を忘れないことは、活力に影響を与えるなあと。私もこんな風に年を重ねていきたいと思いましたね」
写真撮影の合間にも、会話が止まらない杏さんと笹野さん。二人の和やかな雰囲気がそのまま映画にも現れていて、『オケ老人!』を見た後は、ほっこり心が温まること必至。家族、友だち、彼氏、誰と見てもOK!
梅が丘交響楽団の騒動や、団員が一丸となって奏でるクラシック音楽の素晴らしさを、ぜひ楽しんでください!
取材・撮影(杏さん&笹野高史さん特写)・執筆=斎藤 香(c)Pouch
『オケ老人!』
(2016年11月11日(金)より、TOHOシネマズ新宿ほか全国ロードショー)
監督:細川徹
出演:杏、黒島結菜、坂口健太郎、左とん平、小松政夫、藤田弓子、石倉三郎、茅島成美、フィリップ・エマール、飛永翼、光石研、笹野高史ほか
(C)「オケ老人!」製作委員会