映画『昼顔』で牙をむく寝取られ妻の狂気! 怒涛のラスト30分の衝撃にあなたは耐えられるか?【最新シネマ批評】
【最新シネマ批評】
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、おススメ作品をひとつ厳選してご紹介します。
今回ピックアップするのは、大ヒットTVドラマを映画化した『昼顔』(2017年6月10日公開)です。
私はドラマを未見なのですが(スミマセン)、それでもこの不倫ラブストーリーを大いに楽しめましたよ。試写で見させていただきましたが、この映画は久々に見終ったあと、女性同士で会話が盛り上がりました。なぜ盛り上がったかというと……? まずは物語をサクッとご紹介いたしましょう。
【物語】
結婚している身ながら、惹かれあい、恋に落ちてしまった木下紗和(上戸彩)と北野裕一郎(斎藤工)。隠し続けた関係が明るみに出たとき、二人は別れることになりました。
そして3年後。紗和は海沿いの街にいました。夫と離婚した彼女は、レストランで働きつつ、小さなアパートで一人暮らし。一方、裕一郎は妻の乃里子(伊藤歩)との夫婦生活を続けながら、大学の非常勤講師として働いていました。
ある日、紗和は、自分が暮らす街のホールで、蛍に関する講演が開催されることを知ります。そのチラシに書かれた名前は北野裕一郎。紗和は会いたい気持ちを抑えきれずに講演を見に行きます。そのときから二人の関係は再び始まるのです。
【紗和と裕一郎の関係にフォーカスした映画版】
ドラマ版「昼顔」では、吉瀬美智子と北村一輝が演じる男女の不倫関係もあったようですが、映画版に彼らは登場しません。完全に紗和と裕一郎の関係に絞っているので、映画版から見てもスッと世界に入っていけました。登場人物とエピソードを絞って大正解です!
二人の再び燃え上がる関係は、ドラマを見ていた人にとってはたまらない展開かもしれません。「今度こそ幸せになって」と思う人もいるのかも。でもそう簡単にはいきませんよ~。
二人の前に立ちはだかるのは妻の乃里子。女の勘は鋭いですからね、仕事と称してこっそり紗和との逢瀬を重ねていた裕一郎ですが、バレバレですよ。ここから妻の逆襲の始まり。乃里子はドラマ版でもジリジリと紗和を追い詰めたり、暴れたりしたそうですが、正直、夫の2度目の裏切りは、こちらの想像を超えるダメージを乃里子に与えていたのです。
【北野の魅力を再確認】
ポーチ編集部でこのドラマにハマっていたスタッフは、このドラマの魅力をこう語っていました。
「何と言っても斎藤工演じる北野先生につきます。ものすごく無口で真面目なんですが、その人が、教師という聖職でありながら、越えてはならないラインを超えてしまう……というところにぐっと来ました」
やっぱり! 不倫相手が斎藤工なので、イケメンだし、女好きが本当の恋を知るみたいな感じじゃないの? と、映画を見る前は思っていたワタクシ。でも映画を見てビックリしました。裕一郎がモッサリしていてドンくさく不器用そうな男だったからです。こういう男が本気になると後戻りできないんだろうなあという怖さも感じましたね。斎藤工がその雰囲気を出すのが上手いんですよ。
【イライラさせるヒロインの紗和】
逆に上戸彩が演じる紗和は、見る者をイライラさせるんですね。海辺のレストランで働いていて、店長(平山浩行)とお互いに深い会話をするのですが、言われるままについていくし、男からしたら「気があるのかな」と思わせるような行動があるわけです。
彼女は無意識なんでしょうが、見ていてだんだんイライラしてくるんですよ。そういう女性の神経を逆なでする何かが紗和にはある。だから試写を見た後、女性陣でいかに紗和にイライラしたかを語り合ってしまいました。
【映画版のキーになる存在は乃里子】
ドラマでは、紗和の夫も重要な人物だったと思いますが、離婚しているので登場しません。でも不倫が再燃した二人に怒り心頭な乃里子は、この映画の最重要人物。映画は完全に裕一郎、紗和、乃里子のトライアングルで構成されています。2度目の不倫がバレてから、このトライアングルはずっとグラグラしっぱなし。もちろん揺らしているのは乃里子で、彼女の精神状態がこの映画の要です。
そして紗和のある一言が引き金となって、後半、怒涛の展開へと突き進んでいくんですよ。最後の30分はジェットコースター映画みたいでした。なんとなく予想はできたものの、それでも「ええええええ!」という感じ。
映画『昼顔』を見ると、不倫の当事者は本気で「もっと早く知りあえば」とか「運命の相手なのに」と思っているんだろうなというのがよくわかります。でもいずれにせよ不倫でハッピーはありえない。そんな作り手のメッセージも感じる作品でしたね。
執筆=斎藤 香(c)Pouch
『昼顔』
(2017年6月10日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー)
監督:西谷弘
出演:上戸彩、斎藤工、伊藤歩、平山浩行、黒沢あすか ほか
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