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『美女と野獣』昆夏美&山崎育三郎インタビュー / 吹替版でベルと野獣を演じるミュージカル界のスターが語る熱い思いと吹き替えの難しさ【最新シネマ批評】

   



【最新シネマ批評・インタビュー編】
映画ライター斎藤香が皆さんよりもひと足先に拝見した最新映画のなかから、出演者をインタビューいたします。今回は日本語吹替版の俳優さんをクローズアップ!

Pouch の最新シネマ批評でも先日紹介した、2017年4月21日公開の実写版『美女と野獣』。そのプレミアム吹替版で、ベルを演じる昆夏美さんと野獣(王子)を演じた山崎育三郎さんにインタビューしてきました。

お二人ともミュージカル界のスター俳優ですが、ディズニー映画の声優は初挑戦。

取材部屋に現れた昆さんと山崎さんは、イベント前ということで、ベルと王子のファッション。昆さんはイエローのドレス姿、山崎さんはキラキラの王子スタイル……!

「目の前にベルと王子がいる~」

まぶしいお二人を前にして、私は喜びでクラクラしながら取材スタートです。

【ベルと野獣役へのふたりの熱い思い】

――まず、『美女と野獣』のプレミアム吹替版のオーディションのときのことを聞かせてください。

昆夏美さん(以下、昆)「ディズニーのアニメーションは小さな頃からずっと見ていて、特に『美女と野獣』は大ファンだったんです。実写化されることも嬉しくて“絶対に見よう!”と思っていました。

そのあと“日本語吹替版のベルのオーディションを受けませんか?”と声をかけていただき、ビックリしましたけど、ものすごくやる気が出て、すごい熱量を持ってオーディションに臨みました。

オーディションのときはセリフと歌を聞いていただいたのですが、とても楽しかったです。ずっと大好きで憧れていた世界なので、オーディションだけでも、その世界に入れた喜びでいっぱいでした」

山崎育三郎さん(以下、山崎)「僕もディズニーのアニメーションで育ちました。最初に見たのは『アラジン』。特に楽曲が好きで「ホール・ニュー・ワールド」のシーンは何度も見ました。『美女と野獣』『リトル・マーメイド』『シンデレラ』、大好きな映画はたくさんあります。

僕はディズニー・アニメーションでミュージカルに出会い、ミュージカル俳優になったので、ディズニー・アニメーションの声優はずっと憧れていました。だから、オーディションのチャンスをいただいたときは “絶対にやりたい!”と気合いが入りました。

オーディションでは、野獣ボイスを意識して、バリトンのように低く響く声で臨んだのですが、ディズニーのスタッフさんから “野獣にならないでください、山崎さんらしく、野獣になってしまった王子の葛藤を演じてください”と言われました。

そのときから心のままに王子を演じて選んでいただきました」

【うれしくて叫ぶ昆さん&喜びを噛みしめる山崎さん】

――オーディションで役が決まったときのことを教えてください。

「私は、プライベートで温泉に行っていたとき、お風呂から上がったら、携帯にマネージャーさんから着信がいっぱい入っていたんです。まさかオーディション結果だとは想像もせずに、マネージャーさんに電話をしました。

そしたら“ベル役に決まったよ”と言われ、温泉の脱衣所でキャア~!と叫んでしまいました(笑)

あんな風に体中から湧き上がってくる悲鳴は初体験で、全身の細胞が喜んでいる!という感じがしました」

山崎「僕も電話で聞いたのですが、昆さんとは正反対で、凄く冷静でした。

僕は本当にうれしいと逆に冷静になるタイプなので、スケジュールの確認するときと同じテンションで“わかりました”といって電話を切りました。あとからジワジワと喜びが押し寄せてきて“僕が日本語吹替え版の野獣を演じるんだ”と喜びを噛みしめました。

そのとき“ベルは誰が演じるんだろう”と思ったんです。瞬時に“昆さんがいいんじゃないかな”とも。

僕は昆さんと舞台『ロミオとジュリエット』『レ・ミゼラブル』で共演経験があるので、彼女の実力は知っています。昆さんは若手のミュージカル女優のトップですし、顔もエマ・ワトソンさんに似ていますしね(笑)」

「似ているだなんて、何でそういうこと言うんですか(笑)」

――すごくいいコンビですね! 昆さんは野獣役が山崎さんと聞いていかがでしたか?

「私は山崎さんと聞いて、ホッとしました。何作か共演し、仲よくしていただいていますから。

プロモーションなどで一緒に行動することを考えると、初対面の俳優さんだったら緊張するかも……と思っていたので、山崎さんが野獣役と聞いたときは“よかった!”と」

山崎「ごめんね、僕で。素敵な出会いがあったかもしれないのに(笑)」

「尊敬する山崎さんと一緒なので心強いです。こうやって楽しくプロモーションできますし(笑)」

【『美女と野獣』の吹き替えの難しさ】

――実際に吹き替えの仕事はいかがでしたでしょうか? 難しかった点は?

山崎「すべてが大変でした。野獣役のダン・スティーヴンスさんが作り上げた表情、声、タイミング、全てをピッタリ合わせていかないといけないので。

片方の耳からダンさんの英語のセリフを聞きつつ演じるのですが、画面の秒数も頭に入れておかないといけなくて、多方向にアンテナを張り巡らせて自分の演技をしないといけない。これが難しかったです」

「これまでは舞台で、声、体、表情を使って表現していたのですが、吹替のお仕事は声だけになるので、舞台では成り立っていた声の圧とか感情が、声だけのお芝居になるとオーバーになってしまうんですね。

感情を出し過ぎて、ディレクターさんに“抑えて”と言われました。ベルとしては情熱的に演じないといけないのですが、冷静さも必要で、そのさじ加減が難しかったです」

――でも憧れていたディズニーの世界へ入ったことへの喜びや、楽しさもあったのではないですか?
山崎「吹替の途中から、自分と野獣がひとつになる瞬間があって、思うようにハマったときは嬉しかったですね。

失敗しても、続けて、経験を重ねていくことで達成できるんだなと思いました。野獣に感情移入して泣けてくるシーンもあり、冷静さを保たなければと思いながら演じていました」

「初めてのジャンルに挑戦するとき、私はナーバスになりやすい性格で、うまく出来るかな……と、不安になってしまうんです。

確かに大変だったけど、新しい仕事を終えてすぐに “また声優の仕事やりたい” と思えたのは、大好きな世界に入れたからだと思います。声優として最初のお仕事が『美女と野獣』で感謝していますし、またトライしたいです」

【男性が見ても魅力的な野獣と、知的で聡明なベル】

――では最後に、実写版『美女と野獣』の魅力を。

山崎「実写版の野獣は、アニメーションやミュージカルとは少し違い、繊細で愛おしいキャラです。彼の幼少期も描かれていますし、目の表情など細かい演技も見どころです。男性が見ても魅力的なキャラクターですね。

あと、この映画が凄いのは、大人と子供、男女、年代で感動ポイントが違うところ。それだけ奥深い物語だということです」

「実写版の『美女と野獣』は、子供の時に見たアニメーションの印象と違います。

ベルはアニメーションだと可憐だけど、エマさんが演じるベルは現代的で、女性の共感を得られるベルだと思いました。知的、聡明、かっこいいんです。

ベルと野獣の愛やお城の人との信頼関係も描かれていて、これは愛の物語だなと改めて思いました。ぜひ、大切な人と見てほしいです」

【プロフィール】

昆夏美(こん なつみ)

「ロミオ&ジュリエット」のジュリエット役でデビュー。「ハムレット」「レ・ミゼラブル」「ミス・サイゴン」など、多数のミュージカル作品に出演するミュージカル界の歌姫。

山崎育三郎(やまざき いくさぶろう)

舞台・ミュージカルなど話題作に出演してきた実力派。「ロミオ&ジュリエット」「レ・ミゼラブル」「プリシラ」など。ミュージカル界のプリンスと言われる人気スター。

取材・執筆・撮影(昆さん&山崎さん)=斎藤 香 (c) Pouch

『美女と野獣』
(2017年4月21日より、TOHOシネマズ日劇ほか全国ロードショー)
監督:ビル・コンドン
出演:エマ・ワトソン、ダン・スティーヴンス、ルーク・エヴァンス、ケヴィン・クライン、ジョシュ・ギャッド、ユアン・マクレガーほか
プレミアム吹替版キャスト:ベル(昆夏美)、野獣(山崎 育三郎)、ポット夫人(岩崎 宏美)、モーリス(村井 國夫)、吉原 光夫(ガストン)、藤井 隆(ル・フウ)、成河(そんは / ルミエール)、小倉 久寛(コグスワース)、濱田 めぐみ(マダム・ド・ガルドローブ)、島田 歌穂(プリュメット)、池田 優斗(チップ)ほか
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