【名作医療映画シリーズ】『レナードの朝』は医師が綴った実話の映画化 / 30年の眠りから目覚めた患者の「それから」を描く
いま、命の最前線で懸命に働く医療関係者を応援すべく、医療がテーマの名作映画を数回にわたってピックアップしていきます。
第1回目にご紹介するは、名優ロビン・ウィリアムズとロバート・デ・ニーロが共演した感動作『レナードの朝』(1991年公開)。めちゃくちゃ泣ける映画です。
【物語】
1969年、アメリカのとある病院にセイヤー医師(ロビン・ウィリアムズ)が勤務することになります。
この病院は、重度の心の病や障害疾患の患者が入院していました。30年間「嗜眠性脳炎」という病で寝たきりのレナード(ロバート・デ・ニーロ)もその一人。セイヤーは患者に対し、さまざまな反射神経の動作を試したあと、ある最新治療薬を服用させることでいい結果につながるかもしれないと考え、レナードに投与しました。すると、みるみる効果を発揮したのです。
【医師が綴った実話の映画化】
精神科医のオリバー・サックスの実話がもとになった本作は、大きな病を背負った患者たちを救おうと、毎日、患者と接し、その動きを観察したり、思いをくみ取ったりしながら、病の軽減と完治を目指してたゆまぬ努力を続けた医師と看護師らの物語です。
セイヤー医師の何が凄いって、その諦めない姿勢です。ひたすら観察し、ちょっとした行動をきっかけにボールを投げたり、物を落としたり、いろいろなことを試して、患者の反応から治療の糸口を見つけようとします。
そして、重度の病気で寝たきりのレナードに対して、母親との意思を疎通ができていると感じた彼は「もしかしたらパーキンソン病の薬が効果があるかもしれない」と投与。すると、ほぼ昏睡状態だったレナードが目覚めるのです! 昏睡状態で一生を終えるだろうと思われていたレナードが目覚めたときの感動といったらありません。セイヤー医師や家族の驚きと同じように「おおおおお!」と声出しそうになりました。
【現実から目を背けない展開】
ただレナードが目覚めて「めでたしめでたし」ではありません。
初めて見る景色、周囲の人々との交流、レナードは恋もします。おそらく「人生って楽しい」と思ったでしょう。やがて、欲がでてきて、「外に出たい、社会に出たい」と思うようになります。しかし、それはできない。なぜなら薬の効果はいつまでなのか、副作用はないのか、完治するのか、すべてが未知数だからです。
普通の生活ができるようになったからこそ、自由がないことを苦痛と感じてしまい、セイヤー医師とレナードは衝突。その姿を見ながら、病との闘いはまだまだ続くのだ……と胸が痛くなります。でも、そうした現実をしっかり描いているところに、本作の誠実さを感じました。
【ウィリアムズとデ・ニーロの名演に大感動】
セイヤー医師はロビン・ウィリアムズ、レナードはロバート・デ・ニーロが演じ、ふたりの演技も圧巻でしたね。患者によりそい、研究者としての目線もありつつ、苦しみから解放してあげたいという情熱が溢れているセイヤー医師。一方、レナードは自分を目覚めさせてくれたセイヤーへの信頼から「もとの状態に戻っていく自分を、ほかの患者のために記録をしろ!」とセイヤーに告げる……。
そんな風に言えるのは、二人の間に深い信頼関係があったからこそ。セイヤーとレナードは。医師と患者の垣根を超えて、同じ目標に向かって歩む同志になったんだなあと。とにかくすごい、すごい二人だと思うと同時に泣けました……。この説得力は、ウィリアムズとデ・ニーロの名演がなければ不可能だったでしょう。
医師と患者の信頼関係を描くと同時に、辛い病との闘いから目を背けずに真摯に描く映画『レナードの朝』。ぜひ観ていただきたい名作です。
執筆:斎藤 香(c)Pouch
『レナードの朝』
監督:ペニー・マーシャル
出演:ロバート・デ・ニーロ、ロビン・ウィリアムズ、ジェリー・カヴナー、ルース・ネルソン、ジョン・ハード、ペネロープ・アン・ミラー
(発売中/Blu-ray:2,381円+税/ソニー・ピクチャーズ・ホームエンタテインメント)
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