【ネタバレあり】映画『貞子』を本音レビュー! 前半の火災現場の心霊動画がとにかく怖いけど後半は…
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのは映画『貞子』(2019年5月24日公開)です。日本一怖い怨霊として存在する貞子を生んだホラー映画『リング』の中田秀夫監督が、シリーズの最新作として新たな恐怖を演出したのが『貞子』。あの名作『リング』を超えるか? 公開初日に見に行きました! では物語から。
【物語】
心理カウンセラーの秋川茉優(池田エライザ)が勤務する病院に、団地で起こった放火事件で家族を亡くした少女(姫嶋ひめか)が入院しました。彼女は放火の秘密を握る少女でしたが、言葉を発しません。
同じ頃、動画クリエイターの茉優の弟・和真(清水尋也)が、心霊動画を撮るために、放火があった団地の部屋にカメラを担いで侵入。しかし、和真はその日から行方不明になってしまうのです……。
【冒頭からゾワゾワする恐怖演出!】
冒頭からめっちゃ怖いです。団地のクローゼットに閉じ込められた少女。そのクローゼットの隙間から少女をにらむように覗く母親(ともさかりえ)の目。「何かが起こる」感がハンパありません。その団地を母親が放火するのですが、石油を部屋に巻き散らす母親に「やめて~」と心の中で叫んじゃいましたよ。
その放火事件をきっかけに恐怖は加速します。動画クリエイターの和真がアクセス稼ぎのための、心霊動画を撮影しようと放火部屋でカメラを回し続けるのですが、見ちゃいけないものが見えちゃいそうで本当に怖かったです!
また少女が病院で起こす怪現象は恐怖のテンションを上げていくのに十分でした。母親に愛されない孤独を抱えた少女の心の隙間に入り込んで、乗り移った貞子。少女が恐ろしい形相に激変する姿は、恐怖映画の金字塔『エクソシスト』で悪魔に乗り移られた少女を思い出したり、特別な力を発揮する姿はブライアン・デ・パルマ監督の傑作ホラー『キャリー』のようだと思ったりしました。「この少女が後半の鍵。貞子と一緒にとんでもないことをするんだ!」とワクワクさせられる要素満載でしたね。
【クライマックスは貞子登場だけど…?】
後半、茉優が貞子のいる場所を特定し、和真を取り戻すために貞子と対峙する場面がハイライト。前半の心霊動画や、貞子が乗り移った少女のシーンの恐ろしさが布石ならば、ここが一番の恐怖シーンとなるはず。貞子はいったいどうするつもりなのか。茉優と和真は貞子に取り込まれてしまうのか……とハラハラしていたのですが、貞子が登場しても恐怖を感じない自分がいました。
テレビ画面から這い出して来るお約束の姿を何度も見ていて、貞子という存在に慣れてしまったせいかも。
今までとは違う、新しい恐怖を見せてくれる貞子に期待していたけれど、貞子は変わらなかったのです。
【貞子映画の初心者にオススメ】
とにかく前半がめちゃくちゃ怖かっただけに、後半にまでその恐怖が持続しなかったのが個人的にはちょっと残念……すみません。でも、初めて貞子の映画を観る人にとって、この映画の貞子は十分怖く、キャーキャー言って楽しめるはず。貞子映画の初心者にオススメのホラー映画と言えるでしょう。
執筆:斎藤 香 (c)Pouch
『貞子』
(2019年5月24日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー)
監督:中田秀夫
原作:鈴木光司「タイド」(角川ホラー文庫刊)
出演:池田エライザ
塚本高史 清水尋也 姫嶋ひめか 桐山漣 ともさかりえ
(C)2019「貞子」製作委員会