【書籍レビュー】マンガ『恋煮込み愛つゆだく大盛り』はチクチク切ない7つ恋愛が描かれる…体だけの関係、親しかった女友達など
ここ最近ネットを中心に話題となっているのが、にくまん子さんの漫画『恋煮込み愛つゆだく大盛り』(KADOKAWA)。帯には
「ダメな恋の方が楽しくないですか?」
という核心をつく一文が書かれていて、「たしかに……!」と深くうなずいてしまいました。そもそも恋愛って、暴走したり後悔したりと、ダメダメ尽くしのことのほうが多いような気がしますしね……。
【恋愛にまつわる7つのオムニバスストーリー】
『恋煮込み愛つゆだく大盛り』は、「周りになにを言われたって……それでもこれが、私のしあわせ」をキーワードにした短編集。
コミックスに掲載されているのは描き下ろし漫画を含めた7つのストーリー。さっそく読み始めたところ……面白くて切なくてやるせなくて、やめられない止まらない~!
ファンタジーテイストから怖ろしく現実的なものまでどの作品も興味深いのですが、中でも私が特に胸をつかまれたのが、『いつもはなつにおわる』と『よよの渦』の2作品です。
【温度差が切なくじれったい『いつもはなつにおわる』】
『いつもはなつにおわる』で描かれるのは、体だけの関係の男女の “ある1日” 。
ご飯を食べて他愛もない話をして、体を重ねる。そんないつもと変わらない日を過ごせると思っていた男性と、別れを言うためにやってきた女性の “心の温度差” のようなものが伝わってきて、胸が苦しくなるんです。
正式に付き合っていなくても、濃密な時間を何度も重ねていくうちにいつしかかけがえのない相手になっていた……というケースは、ままあるもの。
だけど言葉にしなければいつまでもあいまいで、関係自体もどこまでも脆いものだということが、残酷なまでに描かれています。
【胸の奥までえぐられる『よよの渦』】
一方『よよの渦』で描かれるのは、親しい友人関係にある男女の “行く末” 。
ずっと仲が良くて、何でも言い合えて、どんな恥ずかしい姿だって見せられる人だからこそ、恋愛関係は望まない。そう思っていたはずだったのに、女性から「好きな人ができた」と聞かされたときから、男性の心がどんどん変化していくんです。
距離が近すぎると、自分の気持ちにも、相手の気持ちにも気がつくことができない。相手のためを思って動いているのに、それがかえって大きなすれ違いを生み、ついには傷つけてしまう。
そうした矛盾やもどかしさが「これでもか!」と押し寄せてくる展開となっていて、胸の奥の奥までえぐられる……! タイトルさながら、切なさが “つゆだく大盛り” だよ~~~!
【なんかもう泣ける】
2作品に共通しているのは、「好きだよ」と言葉にすることの大切さ。
“あいまい” は自由で楽しいけれど、モヤモヤとした苦しみもセットになって付いてくるものなのかも……と、しみじみ思ってしまったのでした。どうしようもなさに泣けてくる作品ばかりなので、みなさんもぜひ!
参考リンク:KADOKAWA
撮影・執筆:田端あんじ (c)Pouch