誰もがうらやむハイスペ彼氏をゲット★ でも本当は…うまくいってないんです!! ダメ男に悩む乙女限定の「スナックマリアンヌ」
ここは、恵比寿の外れに佇む雑居ビルの2階、スナックマリアンヌ。ダメそうでダメじゃないちょっとだけダメな男に悩む乙女が夜な夜な集う、憩いの場です。今宵もマリアンヌママに話を聞いてもらおうと、お客さまがやってきたようです。
――カランカラン。
乙女「ひとりなんですけど、いいですか?」
ママ「もちろん。うちは彼氏持ちでも、おひとり様でも大歓迎よ」
乙女「『ひとり身でもいいか』って意味で言ったんじゃないですけど……。それに私、一応彼氏はいます!!」
ママ「もちろん冗談よ。さあ、座ってちょうだい」
【今日のダメ男さん:外面だけはいい、誰もが羨むハイスペック男】
相談者:ミキ(31歳)
職業:医療事務
ダメ男さん:彼氏(32歳)
職業:銀行員
交際期間:3年
出会いのきっかけ:友だちの紹介で
ママ「ミキちゃん、ビールでいいかしら? それで、さっき『 “一応” 彼氏がいます』って言ってたけど、彼とはうまくいってないの?」
ミキ「彼とは付き合って、もうすぐ3年になります。銀行で働いていて収入もいいし、顔もいいし、背も高いし、人付き合いもいいし。でも……」
ママ「でも?」
ミキ「外面だけはいいんです、彼。だから表向き、私たちは誰もが羨むラブラブカップルとして友達の間では評判で。だけど……本当はそうじゃない。付き合いたての頃はすごく優しく大切にしてくれたんですけど、今はもう私、彼にゴミ扱いされてるんです」
ママ「それは聞き捨てならないわね。例えば、どんな感じなのかしら?」
ミキ「私の友達と一緒にごはんに行ったりすると、すごい紳士なんですよね。もともと頭のいい人だから話も面白いし、もちろん友達の分もごはん代おごってくれて気前はいいし。でも、私とふたりでいる時は名前じゃなく『おい』って呼ぶし、デートに1時間くらいはいつも平気で遅刻してきて謝らないし、そのくせに私の失敗はいつまでもネチネチと言うんですよ、ツンデレとかそういう次元を超えてるんです。まあ、浮気とかはなさそうなんですけどね」
ママ「なるほどねえ。はい、今日のおつまみは『鯖の味噌煮』よ」
ミキ「わー、きれいな輪切り! 身も崩れてないし、なかなかこうは作れないですよね」
ママ「でしょう。それ、缶詰だもの。でも、タバスコをちょっとかけておいたから、私のオリジナル料理って言ってもいいのかもしれないわね」
ミキ「缶詰かよ! てか味噌にタバスコって……大丈夫なんですか(もぐもぐ)。あっ、ああ、これおいしい! 甘さの中にピリッとした辛さがいい感じ! ごはんよりも、お酒に合うおつまみって感じです。ビールもう1杯もらってもいいですか?」
ママ「ふふ。タバスコと鯖の味噌煮って、けっこう合うのよ。使ったのはこの缶詰(ことん)」
ミキ「あーよく見かけるやつ…… ってこのサバ缶の賞味期限、昨日までじゃないですかーーー!!!!」
ママ「いいじゃない、消費期限じゃなくて賞味期限だもの。プラス1日分しっかり味がしみこんでて、おいしいわよ」
ミキ「言われてみたら確かにそうかも……すごい! そんなウラ技があるなんて」
ママ「単に忘れてただけ。うっかりの産物よ」
ミキ「感動しておもいっきり損しました! でも『これ大丈夫だよね』って思ったまま忘れるって、よくあります」
ママ「そう、そうなのよ。賞味期限がいつの間にか切れていたのに気づかないっていうことがよくあるのよね、人生には。ね、ミキちゃんの彼、ミキちゃんにとってとっくに賞味期限切れだってこと、気づいてるかしら?」
ミキ「え……賞味期限切れ? でも、でも、彼って本当は優しい人なんです。仕事も安定してるし、かっこいいし、もう3年も付き合ってるからもう少し耐えれば、結婚も考えてくれるはずだし……」
ママ「大事なはずの彼女を『オイ』呼ばわりする人、本当に優しいって言えるのかしら? 結婚の話、向き合ってくれたことがある? そのふたつはただのあなたの都合のいい想像、『仕事が安定』『かっこいい』はただのスペック。いちばん大事な、彼氏としてのクオリティはどうかしら?」
ミキ「……ばっさり斬るなあ。でも、確かにそうかも」
ママ「サバ缶のように賞味期限切れでもおいしく、なんてうまくいかないのよ、人生は。こんなに味が落ちきった彼、この先どんどん腐っていく一方なのよ? いくら外面はよくても、中身が腐っていたらおしまい。結婚っていうけど、オイ呼ばわりされてネチネチ文句言われる結婚生活なんか、最初から腐りきって真っ黒よ」
ミキ「でも、私だっていつ賞味期限切れになるか……。もうこの歳だし」
ママ「歳で賞味期限をどうこう言うのは男の価値観にやられてるから、おやめなさい。それより、このまま腐りかけの彼と一緒にいることのほうがあなたを腐らせるわ。そうなる前に、今こそ動き出すべきなんじゃないかしら?」
ミキ「ありがとう、ママ。私、誰かに背中押してほしかったのかも……。これから腐った缶詰、捨てに行ってきます!」
ママ「がんばって! でもサバ缶は賞味期限切れでもオッケーよ!」
――カランカラン。
こうして、今日もダメ男に悩む乙女をまたひとり、恋愛という戦場に送り込んだマリアンヌママ。次のお客さまは、あなたかも!? スナックマリアンヌでは、迷える乙女の悩みを聞く憩いの場として、いつでもご来店をお待ちしています。
撮影協力:コワーキングスナックCONTENTZ分室
執筆=マリアンヌ / 撮影=K.ナガハシ (c)Pouch
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