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顔を変えなければいけない「顎変形症」の壮絶な手術と術後のガチ体験記【美容整形ではなく歯列矯正】

   


「歯医者さんで美容整形するみたいなものですね」

2年前の冬、とある大学病院に歯列矯正の相談をしたところ「手術が必要」と言われました。歯医者で手術が必要だなんて初めて聞いた私は目をパチクリ。しかも顔周りの手術になるので、「顔が変わる」と言われました。それはもう美容整形に近いくらいの変化だとか。

こっちとしては、「キレイな歯並びになるしキレイな顔になる(たぶん)なら、問題ないです! むしろやってください〜」とルンルンでお願いしました。しかしこれがどれほど大変なものだったか、当時はわかっていませんでした。

【歯医者が断るほどヤバかった私の歯並び】

私の歯並びは、そりゃもう残念なものでした。

小学生の頃からずーっとガタガタ。前歯は変な方向を向いている、大人の歯は生まれつき上下合わせて5本ない、普通の人より歯が細い、うけ口など、とにかくいろんな理由で歯並びがひどかったです。そのせいで、写真に写るときは常に口を閉じていました。歯を出して笑え? 冗談じゃありません。

【矯正しようとするも断られまくっていた】

周りからは「どうして矯正しないの?」「子どもの頃、矯正しなかったの?」と言われる事も度々ありました。しかし、私は矯正をするべく10歳から歯医者さんに通っていたのです。なのに様子見のまま何もせず18歳に。大学入学に合わせて上京しなければならなかったので、今度は東京であちこちの歯医者さんに相談して回ったのですが……

歯医者A「うちでは難しい」
歯医者B「うまくいかないかも」
歯医者C「ダメだったらごめんね」


と、なんとも悲しい返事ばかり。「ダメだったらごめんね」ってなんやねん! なぜこんなに断られたのかと言うと、私は「顎変形症」という病気だったからなのです。

【顎変形症とは】

読んで字のごとく、顎(あご)が変形している病気。どう変形しているのかというと、私の場合は「上顎後退」「下顎前突」でした。つまり普通の人よりも、上アゴが引っ込み、下アゴが出ているということ。「横顔が花王のマークに似ているよ」と言われた中学時代を思い出しました。

歯列矯正で歯並びがキレイになっても、うけ口のままでは正しい噛み合わせは不可能。そこで、アゴの骨を切りバランスを整えるための手術が必要となるのです。また、骨を切断して骨格を変えるので、顔つきが変わるそう。いったいどんな顔になるはか切ってからのお楽しみ(白目)なんだそうです。

いろいろ大変そう……でも念願の歯列矯正! 全てを先生に託し、お願いしました。

【私のアゴを見ながら手術内容を決める】

矯正開始して2年後。歯がだいぶそろってきたので、外科矯正(手術)の準備が始まります。

どんな手術にするか、レントゲンを見ながら、骨格やアゴの角度を厳密に調査。その結果、上アゴを前にズラす手術(手術名:ルフォー1)になりました。手術内容をざっくりいうと、上の歯を全て切断し、少し前に付け直す方法です。
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先生曰く「上アゴを前に出す手術は珍しい」とのこと。顎変形症の手術は、下アゴを切る人が多いそうです。(実際入院してみると、私以外は下アゴの手術の人が多かった印象)。

また先生から「麻酔から覚めた後パニックを起こさないでね」と言われました。はて……パニックとは?

【いざ手術室へ!】

顔周りの手術なので、後遺症が残る場合があると言われました。失明、味覚障害、麻痺が残るなどなど。顔周りの手術の大変さたるや。先生頑張って応援してる!(しか言えないんですけど)

覚悟を決めて手術台に寝そべりました。次々と体に管が繋がれていき、自分の心臓音が手術室内に響き渡ります。

すると緊張しすぎたせいか、麻酔科の先生たちから「走っている時みたいに(心臓音が)早いわよ」と笑って教えてくれましたが、苦笑いする余裕すらなかったです。

手術着をきた先生たちに囲まれ、「これから少しずつ眠くなります〜」と言われた瞬間「絶対に寝るものか」と思ったのが最後。寝ました。

【手術は成功…しかし涙かと思ったら血が】


麻酔から目が覚めると……い、息ができない!! 喉に石ころでも紛れたのかと思うくらい、異物感があり吐き気が止まらない! 「喉が気持ち悪い」と言おうとしたけど、口が麻痺してうまくしゃべれない。おまけにヨダレが出まくるのに、うまく飲み込めない。一体何が起きているの?

すると目の前にいたお医者さんが、「あ、大丈夫そうですね」と言って無情にも酸素マスクを外していきました。全然大丈夫じゃないよ! 猛烈に苦しいんですけどぉぉぉおお!

母親が私の意図を汲み取って代弁。「右目が痛いみたいです」と全然違うことを伝えて先生たちが右目の検査をスタート。おかーーーーん!! なぜ右目……?と思ったら、右目から謎の出血がたらたらたら出ていたそうな。視界は真っ赤ではなく、白く濁っていたので私は気がつきませんでした。

もう全部やだ! 発狂しそう!! 繋がっている管を抜いてちょうだい!!! とくに尿管の管を!!!!

だけど手術前に外科の先生が「パニックだけは起こしちゃダメよ」と言われたことを思い出し、ゆっくり深呼ky……ああああ深呼吸もできないんだった!

京都での瞑想を思い出して、とりあえず気を落ち着かせました。(尿管の管は抜いてもらった)

【顔の変化に苦しむ】

手術して数時間後、外科担当の先生たちが集まってきました。そして私の顔にぐるぐると巻かれた包帯を取り始めたのです。意識は朦朧(もうろう)としていたけど、とっても緊張しました。

変な顔になっていたらどうしよう、みんなに「前の方が良かったね」と言われたらどうしよう、どうしようもないけど、どうしよう……。

包帯を取った瞬間「いいじゃない。心配していた鼻の穴もそんなに大きくなってないよ」と先生からひとこと。

鼻の穴? あれ、術後に鼻の穴が大きくなるとかキイテナイヨ? おそるおそる鏡をのぞいてみると、顔がパンパンに腫れて、めっちゃ鼻の穴が目立つ顔の私が写っているやないか!!

上アゴを2mm前に出した手術の影響で、鼻も前に出たそうです……。これが美容整形と外科矯正の違いなの?

だけど一番驚いたのは、上の歯の骨をすべて切断した手術なのに、わたしの顔に傷一つついていないこと。医学しゅごい、口腔外科の技術しゅごいよ!

【痛み苦しみと戦う72時間、ムフフな漫画で対応】

術後72時間はずーーーーーっと苦しい。吐気・鼻血・眼血・ヨダレ、顔面麻痺などなど。鼻は血が詰まっているので、口呼吸のみ。なのに、口内は上下の歯をゴムで固定し、さらに顔もアゴバンテージというもので、ガッチリ固定しているので口はほとんど開きません。

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とにかく痛くて息苦しい。苦しみに耐えているうちに疲れて眠って、痛みで目が覚めてを繰り返していました。

どうやったら苦しみを忘れられるのか、真面目に考えた結果、「三大欲求大作戦」を決行。「食欲」「睡眠欲」「性欲」のうち、食欲と睡眠欲は機能停止。でも性欲は……! ということで、Kindleで無料のムフフ漫画を読んで痛みを忘れる作戦に出たら、大成功。ムフフ漫画家は偉大だと思いました。

【退院:普通の生活に戻るには3ヶ月かかる】

魔の72時間がすぎると、出血や腫れがマシになってきました。術後8日目で抜糸、術後9日目で退院。しかし完全復活はまだまだ先の様子です。

顔は麻痺が残り、口も指一本分しか開きません。おまけに硬いものも食べられないのでスープやおかゆがメイン、激しい運動は禁止、などまだ安静でいなければなりません。普通の生活に戻るには、3ヶ月ほどかかるそうです。

【術後の悩み:周りの反応】

術後3週間たった現在。顔の腫れも落ちつき、キレイな歯並びになって嬉しい反面、まだ新しい顔になれません。小さい頃の写真と見比べると切なさは倍増。なんだか違う人の成長をみているような気がしてしまうのです。

しかし……自分のことは自分で区切りをつけられます。問題は、周りの反応です。「みんな、私の新しい顔をみてどう思うんだろう」と入院中そればかり考えていました。

“歯列矯正で手術が必要な治療がある” というのは、あまり知られていません。私も知りませんでした。なので、「歯列矯正で顔を手術したんだ。だから顔変わったんだ」と説明しても理解してくれる人は少ないと思います。

もし、面白がって「前の方がよかったよ」「治療だけど整形と一緒じゃんw」と言われたらどうしようと、内心ビクビクしながら職場の人や友人に会っています。私だけじゃなく、おなじ病室で顎変形症の手術した女性もまた周りの目を気になって、マスクなしでは外出できないそうです。

今回記事を書いた理由は、「歯列矯正に手術が必要な治療がある」ということを知って欲しいなーという思いから。人によって手術内容も経過も違うけど、歯列矯正に手術があるということを知ってくれるだけで私はありがたいのです。

*おまけ*

今回の手術でお父さん似からお母さん似の顔になりました。遺伝子すごい。

写真・執筆=百村モモ (c)Pouch

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