【本音レビュー】Netflixの『日本沈没2020』は賛否両論の話題作 / 全10話の中に要素がてんこ盛りで飽きさせないけど…
【最新映画シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在Netflixで配信中のオリジナル作品のなかから、オススメをひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回はNetflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』をピックアップします。
小松左京の同名原作を『夜は短し歩けよ乙女』『夜明け告げるルーのうた』などの湯浅政明監督が手がけました。巷では賛否両論真っ二つのようですが、果たして……!? というわけで1話25分、全10話を一気見しました!
【物語】
2020年、突然日本を大地震が襲います。武藤歩は中学の陸上部の仲間と一緒にいるときに地震にあい、目の前で友人たちが命を落とす中、必死の思いで帰宅。家は全壊していましたが、歩の家族は奇跡的に全員が無事でした。
東京の街は跡形もなく崩れてしまい、誰もが帰る家を失う中、歩たちはかすかな情報を頼りに西へ向かうことに。その道中、数々の苦難に武藤家は立ち向かっていくことになるのです。
【テンポよく綴られるパニックエンタテイメント作品】
観る前「戦争映画のように辛くしんどい気持ちになるのではないか……」と少々ビビりながら鑑賞しました。常に生死の境目で生き抜く人々の物語なので、たしかに辛く悲しいシーンはありますが、個人的な感想としては、パニックエンタテイメント作品という印象です。
とにかく10話の中にさまざまな要素がギッシリ詰め込まれているので観ていて飽きることはありません。
東京が崩壊したため、歩の家族は西へ向かうのですが、その道中で不測の出来事で命を失う人がいたり、カルト教団の施設に世話になったり、人気Youtuberや大道芸人や歩の憧れの先輩が家族と行動を共にしたり、個性的な登場人物たちがドラマを盛り上げていきます。
日本沈没は一気に起るのではなく、地殻変動により徐々に傾いていくので、たびたび地震が彼らを襲い、そのたびに命がけのピンチに陥り、それを歩たちがどうやって乗り越えるかが見どころです。
【姉弟の成長が未来の希望へと繋がる】
ヒロインは歩ですが、彼女の目線を中心に、武藤家の行動全体をこの作品は追いかけていきます。思春期&反抗期の歩、ゲーマーの小学生男子の剛、そして大らかなお父さんとめちゃくちゃポジティブなお母さんという家族構成で、お母さんはフィリピン人です。
このお母さんは何があっても絶対に諦めない、メンタル最強ママ!
そんな武藤家が日本沈没とどう向き合っていくかを描きつつ、本作の裏テーマは歩や剛の成長物語ではないかと思います。彼らの成長の行く先に「日本沈没」という絶望を乗り越えた日本の希望があるのです。
【日本沈没の不安や恐怖を払拭してくれるか?】
つまりこの作品は「日本沈没」という絶望的な状況をひとつの家族の物語に集約して描いているのです。
本来なら国家がからんできてもおかしくないのですがその気配はなく、あくまで市井の人を描き、日本沈没に向き合う家族のパニックアニメとしてわかりやすく、ドキドキハラハラできる作品になっています。
「日本が沈没したら日本人はどうなるのか、残された日本人はどうやって生きていくのか」という根源的な不安や恐怖に応えてくれる作品ではありません。個人的にはそこが少し物足りなかったかな。
とはいえ、全10話一気見できる勢いのある作品であることは確かです。「全10話、長い~」と思うかもしれませんが、安心してください。1話25分くらいだし、テンポがいいのでどんどん見れちゃいますよ!
執筆:斎藤 香 (c)Pouch
Netflixオリジナルアニメシリーズ『日本沈没2020』
Netflixにて、全世界独占配信中
原作:小松左京『日本沈没』
監督:湯浅政明
声の出演:上田麗奈、村中知、佐々木優子、てらそま まさき、吉野裕行、森なな子、小野賢章、佐々木梅治、塩田朋子、濱野大輝、ジョージ・カックル、武田太一
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