映画『架空OL日記』は、バカリズム演じる銀行OLたちのあるあるな日常に大共感！演技派女優陣がOLのリアルを体現しています！
【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。
今回ピックアップするのはバカリズムが原作＆脚本＆主演を務めた映画『架空OL日記』（2020年2月28日公開）です。バカリズムのブログを書籍化した「架空OL日記」がテレビドラマ化を経て映画化されました。私はドラマ版は見ていないのですが、映画だけでも十分楽しめましたよ。では物語から。
【物語】
月曜日の朝、銀行員の「私」（バカリズム）は、しっかりメークをして出勤。途中で同期のマキ（夏帆）に会い「月曜日の朝はしんどい」と愚痴り合います。更衣室では先輩の小峰様（臼田あさ美）、後輩のサエ（佐藤玲）入社10年目の酒木（山田真歩）と、更衣室の壊れたハロゲンヒーターと同僚の噂を話し合う日々。そこに課長（坂井真紀）や「私」の地元の友達（志田未来、石橋菜津美）が「私」の日常にからんでくるのです。
【これ映画？でも面白いからいいや！と思えるチャーミングな作品】
映画『架空OL日記』を見ている最中「これって映画なの？」と思ってしまいました。起承転結がなく、エピソードの積み重ねで、バカリズムが演じる「私」とOLたちの日常を見せていくだけの内容だからです。普通ならば途中で飽きてしまうと思います。しかし、これが面白い！全然飽きない！それは「私」を取り巻く銀行のゆかいな仲間たちのキャラが立っていることと、彼女たちを演じる女優陣が抜群の演技力で作品を支えているからです。
「月曜日がしんどい」とか「更衣室のハロゲンヒーターは命」とか「会社のトイレの便器にお尻を付けるかつけないか」などの全然ドラマチックじゃない会話の数々を大いに盛り上げているのが、この女優陣。バカリズムの脚本の共感度の高さと女優たちがそれぞれのキャラクターのあり方を熟知していること。加えて会話のテンポが絶妙で、見ているうちに自分も仲間に入りたくなるんです。「映画だから特別」という気負いが全然ないところが逆にすごく新鮮！
【親友の知らない一面を見た！心をチクっと差すリアルな描写】
メインキャストは全員キャラが濃く、誰が一番と選べないほど皆さん魅力的なのですが、楽しい会話の繋がりの中で、少し「お！」と思ったのは「私」とマキのやりとりです。
二人は価値観がばっちりで、お互い知らないことはないくらいの仲に見えましたが、ジムで体を鍛えることが趣味のマキが、ジムの仲間との人間関係を「私」に見せる場面があります。「私」の知らない世界がマキにはあり、「私」と同じくらい仲のよい友達がジムにいる。その現実に「私」がちょっと寂しそうな顔を見せるんです。こういうことあるなあとしみじみ思いましたね。楽しいOL物語の中に心をチクっと差すような描写を差し込んでくるあたりうまい！このシーンはとてもいいスパイスになっていたと思います。
【ストレス発散になるかも！】
映画『架空OL日記』を見て、自分の日常と重ね合わせる人は多いでしょう。そして、会社での会話の数々が、こんな風に映画になっていることに楽しくなったり「うちらだけじゃないんだ」と仲間意識を持ったり。この映画には、退屈な日常を楽しい世界に変える力があると思います。ぜひ女子同士で観て、あーでもないこーでもない言ってほしい。けっこうストレス発散になると思いますよ。
執筆＝斎藤 香 (c)Pouch
『架空OL日記』
（2020年2月28日より、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー）
監督：住田崇
原作・脚本：バカリズム
出演：バカリズム、夏帆、臼田あさ美、佐藤玲、山田真歩、三浦透子、シム・ウンギョン、石橋菜津美、志田未来、坂井真紀
©2020『架空 OL 日記』製作委員会
