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【本音レビュー】フランケンシュタインの作者は18歳の女の子だった…悲しくも壮絶な人生を描く映画『メアリーの総て(すべて)』

   



【最新公開シネマ批評】
映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、ネタバレありの本音レビューをします。

今回ピックアップするのは怪奇小説「フランケンシュタイン」の作者、メアリー・シェリーの人生を描いた作品『メアリーの総て(すべて)』(2018年12月15日公開)です。主演を務める美少女はダコタ・ファニングの妹であるエル・ファニング。

「フランケンシュタイン」を生み出したのが18歳の若い女性だったなんてビックリ! そんな彼女の人生がすさまじいのですよ~。では物語から。

【物語】

主人公のメアリー(エル・ファニング)尊敬する思想家の母を亡くして以来、母が眠る墓地を安らぎの場にしていました。

小説家を夢見ていた彼女は、父の友人宅で開催された読書会で詩人のパーシー(ダグラス・ブース)と出会い、ふたりは恋に落ちます。しかし、彼には妻子がいました。それでも彼との関係を断ち切れないメアリーは、パーシーと駆け落ち。そして彼の子供を身ごもるのですが……。

【16歳~18歳にかけて大人の階段を駆け上がる!】

詩人としのパーシーは、才能あふれる男性。だけど恋愛に関しては、とてつもなくダメ男だったのです。

パーシーの強引な行動のせいで、生まれた子供が亡くなったり、メアリーを男友達に差し出そうとしたり、とにかく最低な男なのです! でも、メアリーは彼から離れられません

詩人としての彼の才能も含めて惹かれているのもありますが、メアリーにはどこか普通の女性にはないメンタルがあるのです。それは創作に携わる人間が持つ“絶望を力に変える才能”ともいえるでしょう。

結果的にメアリーは、16歳から18歳のたった2年間で、大恋愛、駆け落ち、不倫、出産、パートナーの浮気、子供の死など、すごいスピードで濃厚な経験をし、信じられないくらい傷つきます。ですが、全ての悲しい経験は、彼女が気づぬうちに創作の糧になっていきます。メアリーは何か起こるとたびたび衝動的にノートに向かい、一心不乱に文章綴ります。

彼女の中の絶望が筆を持たせ、それが「フランケンシュタイン」誕生へと繋がっていく……。

【フランケンシュタインの物語とリンクするメアリーの人生】

「フランケンシュタイン」は、フランケンシュタイン博士が、死体を生き返らせて再生する物語です。

これには、亡くなった大好きな母と大切な娘に「もう一度会いたい」というメアリーの思いがつまっており、怪物を見捨てた博士はパーシー、怪物が醜いのは、ボロボロに傷ついたメアリーの心なのではないかと個人的には思いました。


ゼロから物語を紡ぎだす小説家の頭の中は、どうなっているんだろうと思いますが、本作を見ていると、物語が誕生する過程や瞬間や思いが、ちょっと見えるような気もしました。よく「身を削って書く」と言いますが、深い傷をえぐって書く行為は、めちゃくちゃ痛そう。でも痛いほどに傑作が生まれるのかもしれません。

【転んでもただでは起きないメアリーの強さにあやかりたい!】

映画の中でメアリーが「私は絶望との闘いの中で、私の声を見つけた。私の選択が私を創った……」と語るシーンがあるのですが、18歳で人生の本質を突いたこの言葉、すごいです。「私は不幸で、かわいそう」ではなく「自分で選んだ道なのだ」と言い切る強さ、見習いたい!


メアリー・シェリーの経験は、不幸の連続ですが、作家の魂が彼女を救った。見終わったあと、不思議と勇気をもらえる映画『メアリーの総て』。19世紀イギリスの物語ですが、彼女の持つスピリットは現代の女性にも響くと思います!

執筆=斎藤 香 (c)Pouch

メアリーの総て
(2018年12月15日より、シネスイッチ銀座、シネマカリテほか 全国順次公開)
監督:ハイファ・アル=マンスール
出演:エル・ファニング、ダグラス・ブース、ベル・パウリー、トム・スターリッジ、ベン・ハーディ
©︎ Parallel Films (Storm) Limited / Juliette Films SA / Parallel (Storm) Limited / The British Film Institute 2017

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